企業における技術を活用したSDGsへの取り組みの考え方
ここまで見てきたように、現在注目されている5GをはじめIoTなどのモバイル関連技術は、さまざまな産業に新たな可能性をもたらすだけではなく、SDGsの達成にも大きく貢献する可能性を秘めている。さらに、表1で見た気候変動対策に寄与するサービス例からも明らかなように、SDGsの目標達成のために行う取り組みは、自社に新たな収益をもたらすための取り組みも兼ねている。
実際に、2030年にSDGsが達成された場合、「食糧と農業」「都市」「エネルギーと材料」「健康と福祉」などの分野での取り組みが進み、世界全体で新たに年間1,331兆円の市場が算出されると見込まれている注6。
日本では、今後、少子高齢化が進展することに伴う社会課題が、さまざまな場面で顕在化してくる。そのような中で、SDGsの各分野の取り組みに5Gやクラウドなどのインフラを元にしたICTを組み合わせて活用することで、図6のように17の目標すべてに対応しながら、日本が抱える各分野の社会課題の解決に寄与できることが示されている。
図6 日本における「SDGs×ICTモデル」の推進
このようにSDGsに関する取り組みを決して特別なものととらえるのではなく、逆に自社とは関係ないと軽んじてもいけない。「長期的な視点から世界におけるリスクを低減させる取り組みとしてとらえる」と同時に、「短中期的な視点から自社に収益をもたらす取り組みとしてもとらえる」ことで幅広い視野をもって取り組みを続けていくことが重要である(終わり)。
Profile
新井 宏征(あらい ひろゆき)
株式会社スタイリッシュ・アイディア 代表取締役社長
SAPジャパン、情報通信総合研究所を経て、現在はシナリオプランニングの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。東京外国語大学大学院修了、Said Business School Oxford Scenarios Programme修了。主な著書に『米国のスマートグリッド新標準:EnergyIoT/OpenFMB報告書』『スマートハウス/コネクテッドホームビジネスの最新動向2015』(以上インプレス)、訳書に『成功するイノベーションは何が違うのか?』『プロダクトマネジャーの教科書』『90日変革モデル』(以上翔泳社)などがある。