非国家アクターの活躍:ACA、WASI、JCI
〔1〕非国家アクター「ACA」の活躍
COP25では、パリ協定の実行に向けて、各国政府だけでなく非国家アクター(Non-State Actors、政府以外の組織)と呼ばれる、都市や自治体、企業などが国を超えて結集し、多様な地球温暖化対策のイニシアティブを結成し、積極的な活動を展開していることが注目された。
各国の非政府アクターイニシアティブをメンバーとして、2018年に設立されたゼロカーボンを目指す、国際組織「ACA」(Alliances for Climate Action、気候変動対策のための同盟)注5も、米国のWASI(We Are Still In)や日本のJCI(日本気候イニシアティブ)注6をはじめ、アルゼンチン、メキシコ、南アフリカ、ベトナムなど6カ国にわたる組織へ発展している。
次に、日本と米国の例を簡単に紹介する。
〔2〕日本の非国家アクター:「JCI」の活躍
COP25の日本パビリオンでは、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)特別顧問であり、JCI(Japan Climate Initiative、気候変動イニシアティブ)代表でもある末吉竹二郎氏が、「日本でも、非国家アクターの脱炭素に向けたアクションは着実に進んでおり、JCIはこの1年間で、参加団体が4倍(加盟数:446団体)にも増えた」ことを報告した注7。
これに続いて、モデレーターであるWWFジャパンの山岸 尚之氏のもと、JCIの参加自治体である下間 健之氏(京都市)、千葉 稔子氏(東京都)、薬師寺えり子氏(横浜市)ほかの参加者によって、パネルディスカッションが行われ、日本の活動を世界に発信してい
る注8。
〔3〕米国の非国家アクター:「WASI」の活躍
図5 America’s Pledgeが発行した2019年版報告書(第3版)
出所 https://www.americaspledgeonclimate.com/
https://www.bbhub.io/dotorg/sites/28/2019/12/Accelerating-Americas-Pledge-Executive-Summary-.pdf
(1)米国のWe Are Still In(WASI)
米国は、中国に次ぐ世界2位のCO2排出量であるが、トランプ大統領は2019年11月4日、正式にパリ協定からの離脱を国連へ通告した注9。
しかし、米国政府が不在でも、米国のニューヨーク州やロサンゼルス州などの州政府や都市、企業、大学などは、「WASI」(We Are Still In、我々はまだパリ協定にいる)という連合組織注10を2017年6月に結成し、すでに2019年12月時点で3,841組織が加盟し、活動している。
(2)“American’s Pledge”(アメリカの誓約)
このWASIや米国の気候同盟他などを含む、パリ協定を支持している関係団体のネットワークである“American’s Pledge”(アメリカの誓約)注11は、各団体の目標や取り組みを積み上げて、CO2排出量や削減目標を算出した2019年版の報告書(第3版)を2019年12月9日に発行した(図5)。
同報告書によれば、米国の非国家アクターは、2030年までに米国の温室効果ガス排出量を政府の目標を上回る37%削減することが可能としている(米国政府の削減目標は2025年までに26〜28%)。
現在、図6に示すように、米国の非国家アクターは、すでに米国のGDPのほぼ70%を担い、米国の人口の65%をカバーし、米国のCO2排出量の50%以上を占めているなど、大きな影響力をもっている。(後編に続く)
図6 America’s Pledgeの分析:米国の非国家アクターには人口の65%が結集している
出所 https://www.bbhub.io/dotorg/sites/28/2019/12/Accelerating-Americas-Pledge-1P.pdf
* * *
特集≪後編≫では、COP25で焦点となった、市場メカニズムとNDCの引き上げの課題についてレポートする。
▼ 注5
https://www.alliancesforclimateaction.org/
▼ 注6
https://japanclimate.org/news-topics/cop25_report/
▼ 注7
JCIの加盟数:2020年1月18日現在、合計:446団体。企業:316(うち金融・投資機関:22)、自治体:32、その他:98(うち大学・研究機関:9、事業者団体:3、消費者団体:7、文化施設・宗教団体:4、NPO/NGO等:75)
▼ 注8
https://japanclimate.org/news-topics/cop25_report/
▼ 注9
パリ協定の規則によって、離脱の手続きが始められる(通告できる)のは発効(2016年11月4日)から3年後にあたる2019年11月4日となっている。
▼ 注10
https://www.wearestillin.com/
▼ 注11
America’s Pledge(アメリカの誓約):ブラウン・カリフォルニア州知事とブルームバーグ元ニューヨーク市長が立ち上げた、(We Are Still Inや米国の気候同盟など他を含む)パリ協定を支持している関係団体のネットワークおよびその報告書名。
日本の非国家アクターであるJCI(気候変動イニシアティブ)は、2018年9月13日、米国の非国家アクターネットワーク,「America’s Pledge(アメリカズ・プレッジ)」と、気候変動対策の強化に向けて、ともに取り組むことを約束する覚書を締結している。
https://japanclimate.org/news-topics/americas-pleadge-mou/