COP26開催までの道のり
2021年10月31日から11月12日まで、英国のグラスゴーでCOP26が開催される(図1)。COP26では、2015年に定められたパリ協定の目標を達成するための具体的な取り組みについてさまざまな議論が行われることになる。
図1 COP26のWebサイト
このCOP26は、もともと2020年の11月9日から20日までに開催される予定だったが、COVID-19の影響もありこの時期に延期された。
COP26自体は延期になったものの、その期間に米国バイデン大統領による気候サミットの開催や、IPCC(The Intergovernmental Panel on Climate Change、国連気候変動に関する政府間パネル)による『第6次評価報告書』の発表(本誌2021年9月号参照)など、気候変動に対する具体的な取り組みについて国際的な議論が続いている。
しかし、さまざまな議論を経て、国際的な足並みがそろってきているとは言いがたい。議長国である英国のボリス・ジョンソン首相は、10月25日に首相官邸で行われた子どもたちとの質疑応答セッションにおいてCOP26について触れ、「今回のサミットはとてもとても大変なものになるだろう。うまくいかない可能性もあるので、とても心配している。必要な合意が得られないかもしれない(“It’s going to be very, very tough, this summit, and I’m very worried because it might go wrong. We might not get the agreements that we need.”)」注3とコメントしたと伝えられており、一筋縄ではいかない会議であることをうかがい知ることができる。
GWECによるマニフェスト
図2 風力エネルギーに関するマニフェストの表紙
COP26に先駆けて、風力発電に関する国際的な業界団体であるGWECが2021年10月18日にプレスリリースを発表注4し、“Global Wind Energy Manifesto For COP26”を公開した(図2)。
このマニフェスト(宣言)の最後には、各国政府や関連機関が現在の気候危機を認識し、COP26において再生可能エネルギー(以下、再エネ)について真剣に議論することを求めるためにつくられたものだと記されている。それでは、具体的にどのような主張が盛り込まれているのだろうか。
マニフェストの冒頭では、地球温暖化を抑制し、2050年に温室効果ガスの排出量ネット・ゼロを目指すことを実現するための手段も技術もすでにそろっている一方で、それらの手段や技術を動員するための政治的な意図や社会的な動きが十分ではないと述べられ、この状況を改善するための具体的な取り組み案についての主張、特に風力エネルギー活用の観点から展開している。
風力エネルギーの現状
マニフェストで主張されている風力発電の重要性を紹介する前に、現在の風力発電の現状を確認する。マニフェストの中でも紹介されているIRENA(アイリーナ。The International Renewable Energy Agency、国際再生エネルギー機関)によると、再エネ発電容量は年々増え続け、2020年末には2,799GWとなっている(図3左側)。
図3 再生可能エネルギーの発電容量の推移と2020年の追加容量
2020年末時点でもっとも容量が多いのは水力発電で、1,211GWとなっている。風力発電はそれに次いで多く733GW、次に多い太陽光発電の714GWとほぼ同量である。
2020年中の追加容量(図3右側)を見ると、全体としては2019年より261GW増えているが、そのうちもっとも増えたのは太陽光発電で127GW増えている。風力はそれに次ぐ111GW増となっている。
また2020年の風力発電の導入を国別に見ると、中国が72.4GWと6割以上を占めている。中国に次いで多いのが米国で14.2GWとなっている。
▼ 注1
COP26:The 26th session of the Conference of the Parties to the United Nations Framework Convention on Climate Change
▼ 注2
Global Wind Energy Manifesto for COP26 - Global Wind Energy Council
▼ 注3
Boris Johnson says chances of Cop26 success are ‘touch and go’ | Cop26 | The Guardian