データセントリック時代の新たな課題
写真 インテル株式会社 代表取締役社長 鈴木 国正(すずき くにまさ)氏
出所 「インテル エネルギーフォーラム2020」(2020年7月22日)、オンラインセミナーより
〔1〕データ・デバイドをいかに解決するか
インテルの鈴木社長(写真)は、冒頭で図1を示し、「我々は、今、どこにいるか?」という問いかけとともに、今後、データセントリック時代の新しい課題となる「データ・デバイド」注1に注目し、その解決に向けた重要性を述べた。
データセントリック時代とは、大量に発生する膨大なデータを中心(センター)に据えて賢く利用し、攻めのビジネスを展開する時代を意味している。
データ・デバイドとは、大量なIT機器の接続と、それらから発生する大量なデータをAIなどを駆使して、「効果的に利用できる企業」と「そうでない企業」との間に生じる、大きな「データ利用の格差」を意味する。この格差をいかに解消していくかが、今日の企業の新たな課題となってきている。
図1 「データ・デバイド」(データ利用の格差)をいかに縮小するか
出所 インテル株式会社 代表取締役社長 鈴木 国正、「インテル エネルギーフォーラム2020開会の挨拶」、2020年7月22日
〔2〕2025年の崖
図1の上部に示す、IT機器の接続数と世界のデータ量は、最近のデータの爆発的増加を象徴的に示している。現在、全世界でインターネットに接続されている機器の総数は1,500億台にのぼり、世界に流通しているデータ量は175ゼタバイト(Zetta Bytes)注2にも達している。
そのデータの約半数はIoTからのデータであり、特に最近では、5Gなどをベースにしたデータである。このデータの伸びは、今後も年平均成長率(CAGR:Compound Average Growth Rate)25%の割合で、継続的に増加していく。
一方、経済産業省が2018年9月に発表した「DX注3レポート」(表1)によると、日本企業は「基幹情報システム」の革新が遅れているため、基幹情報システムの限界から、国際的なデジタル競争についていけず、今後、多くの企業が「2025年の崖」(2025 Digital Cliff)から落ちてしまう、という深刻な事態が予測されている。
表1 「2025年の崖」(2025 Digital Cliff)と主な課題
出所 経済産業省、『DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜(サマリー)』(2018年9月7日)をもとに編集部で作成
この「2025年の崖」こそが、今課題となってきている「データ・デバイド」なのである。
▼ 注1
データ・デバイド(データ利用の格差)は、デジタル・デバイド(Digital Devide)と対比される用語。デジタル・デバイドは、1990年代後半に登場した「情報格差」を示す用語。コンピュータやインターネットなどの情報技術(IT)を活用できる人(企業)と、そうでない人(企業)との間に生じる、貧富やビジネス上の競争力の格差などを意味する。
▼ 注2
ゼタバイト:Zetta Bytes(ZB)。データ量を表す単位で、1021バイトの大きさのデータ単位のこと。例えば、ギガバイト(GB)は109バイト、テラバイト(TB)は1012バイト、ペタバイト(PB)は1015バイト、エクサバイト(EB)は1018バイト。EBの次の単位がZBであり、かなり大きいデータ量であることがわかる。
▼ 注3
DX:Digital Transformation、デジタル技術による企業変革。企業の将来の成長や競争力強化のために、デジタル技術を活用して新しいビジネスモデルを創出し、柔軟に対応できる基幹情報システムを革新して構築すること。