[3GPPリリース16完成!本命の「5Gコアネットワーク」が離陸へ]

3GPPリリース16完成!本命の「5Gコアネットワーク」が離陸へ<後編-2>

― リリース16の5G RAN(無線アクセス網)の特長とリリース17への展望 ―
2021/02/01
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

リリース17のスケジュールと検討項目

〔1〕リリース17のスケジュール

 図5に示すように、3GPPのリリース17は、2021年12月を目標に仕様策定が完了する予定となっている(COVID-19の流行の影響を受けて、2019年3月に決定されたスケジュールから3か月延長されている)。

図5 今後の機能拡張予定~Rel 17(リリース17) 検討予定(注:本文中に解説したように、さらにスケジュールが変更された)

図5 今後の機能拡張予定~Rel 17(リリース17) 検討予定(注:本文中に解説したように、さらにスケジュールが変更された)

【原典】https://www.3gpp.org/release 17
出所 山田 郁夫、「今後の機能拡張予定~Rel 17 検討予定 機能」、TTCオンラインセミナー、2020年10月27日

 しかし、長引くコロナ禍を背景に、従来の集合・対面形式ではなく、仮想形式のリモート会議で検討が行われているが、今回のセミナーでは、さらに仕様策定の期日が延期される可能性もあることが述べられた。

 今回のARIB・TTC共催セミナーの後の2020年12月14日、3GPPは、2021年下期から対面形式の会合が再開されるという前提のもと、次のようなリリース17の新スケジュールを策定し発表した注10

  1. 3GPPリリース17 Stage2仕様凍結:2021年6月
  2. 3GPPリリース17 Stage3仕様凍結:2022年3月
  3. プロトコルコーディング(ASN.1, OpenAPI)凍結:2022年6月

 また、リリース17で提案された多様な利用事例(ユースケース)としては、図6に示す放送事業の例をはじめ、医療事業(有線で接続された機器を5G NRで無線接続にする)、産業用IoT(IIoT)、ドローンを使用した制御など、幅広く機能拡張が行われる予定である。

図6 5G NRを使用した放送事業におけるユースケースの例

図6 5G NRを使用した放送事業におけるユースケースの例

出所 山田 郁夫、「今後の機能拡張予定~Rel-17検討予定機能」、TTCオンラインセミナー、2020年10月27日

 このように、5Gシステムの利用分野の拡大や、すでに仕様化されている従来からのサービス機能の強化(例:産業向けB2BからエッジコンピューティングのようなB2Cへの拡大)なども検討されている。

〔2〕3GPPリリース17の検討項目

 表2は、2019年9月および12月に、3GPP SA2 WG(SA2:SA Working Group 2)で行われた検討項目の優先順位付けの結果、確定した15項目の検討対象である。

表2 リリース17 仕様化検討項目の概要

表2 リリース17 仕様化検討項目の概要

出所 山田 郁夫、「今後の機能拡張予定~Rel 17 検討予定 機能」、TTCオンラインセミナー(2020年10月27日)をもとに編集部で一部加筆・修正

 このほか、3GPP RANのワーキンググループでは、次のような項目が検討されている。

  1. 52.6~71GHzという、さらに高周波数帯へ5G NRを適用する検討
  2. 5G NRを使用した、前述したバックホール回線(IAB:Integrated Access and Backhaul)の拡張
  3. 5G NRを使用した端末の位置測位の精度を高める拡張
  4. 一般的な5G端末よりも複雑性のない、シンプルで低コストな端末の開発が可能な仕様(RedCap)注11の検討
  5. 地上以外の衛星や海上(NTN:Non-Terrestrial Network)などでの利用の検討

 山田氏は最後に、「3GPPでは、昨今、通信業界のみならず、生産機器の製造業界や放送局、鉄道、自動車業界など、多様な業界(バーティカル)からの参加が増大しています。日本からはまだ少ないですが、欧州勢は3GPPに積極的に参加して、5Gビジネスの拡大に向けて提案をしています。日本の産業界の方々が3GPPに参加され、新たな国際的なビジネス機会を創出されることを期待しています。3GPPの活動に関心がありましたら、ぜひ、TTCおよびARIBの関連する活動に参加してください」と、日本企業に3GPP参加を呼びかけて講演を締めくくった。

(終わり)

■取材協力(掲載順)■

[前編](2020年12月号)

◯横田 大輔 氏:ソフトバンク株式会社 コアネットワーク本部 コアネットワーク制御開発部 部長。TTC移動通信網マネジメント専門委員会 委員長。

 

◯住田 正臣 氏:華為技術日本株式会社 標準化・事業推進部 3GPPコーディネーションディレクター。

[後編]

◯中野 裕介氏:KDDI株式会社 技術企画本部 技術戦略部 標準戦略グループ グループリーダー。3GPP TSG-SA 副議長。

 

◯永田 聡氏:株式会社NTTドコモ ネットワークイノベーション研究所 担当課長。3GPP TSG-RAN 副議長。

◯山田 郁夫氏:株式会社NTTドコモ ネットワーク開発部ネットワーク技術戦略担当 担当課長。TTC 3GPP専門委員会 副委員長。


▼ 注10
3GPP Press Release「Release 17 timeline agreed」(リリース17のタイムラインが合意されました)、2020年12月14日参照

▼ 注11
RedCap:Reduced Capability New Radio (NR-REDCAP) 、機能をスリムにしたNR仕様。LTE-M/NB-IoT等のLPWA以上でNR eMBBおよびURLLC未満の間の利用用途に対応する仕様(産業用センサー、ビデオ監視等を想定)。

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