3GPP役割と5G標準化のプロセス
表1 「3GPPサミット 〜5G標準化の最前線〜」のプログラム(敬称略)
出所 CEATEC 2018の配布資料より
〔1〕3GPPのプロフィールと5Gまでの動き
ETSI CTOのエイドリアン・スクレイス(Adrian Scrase)氏は、3GPP(表2)のオーバービューとして、3GPPがこれまで通信のイノベーションを推進し、標準仕様を策定してきた歴史を、2G(GSM)から3G(UMTS:WCDMA)、4G(LTE、LTE Advanced、LTE Advanced Pro)そして、5G(NR)の標準仕様を策定している現在までを整理して語った(図1)。
表2 3GPPのプロフィール
ETSI :European Tele communications Standards Institute:欧州電気通信標準化機構。
出所 「3GPP Overview:グローバルモバイルシステム向けの標準化エコシステム」、エイドリアン・スクレイス(2018年10月17日)の資料をもとに編集部で作成。
図1 3GPPの役割:2G(1990年代)⇒ 3G(2000年代) ⇒ 4G(2010年代) ⇒ 5G(2020年代)
出所 「3GPP Overview:グローバルモバイルシステム向けの標準化エコシステム」、エイドリアン・スクレイス、2018年10月17日
図2 5Gシステムの標準化に関する主な組織:ITU-Rと3GPPの関係
ITU-R(International Telecommunication Union Radiocommunication Sector:国際電気通信連合無線通信部門)。
WP5D :Working Party 5D、5D作業部会。:ITU-RのSG5(Study Group 5:第5研究委員会)のもとに設置されている作業部会(ITU-R SG5 WP5D)。具体的にはIMTシステム(移動通信システム)の検討を行っている専門家会合。現在は5G システム(IMT-2020)の標準化を推進。
出所 各資料をもとに編集部で作成
〔2〕5G標準化のプロセス
図2に、移動通信システムの標準化に関するITU-Rと3GPPの関係を示す。5Gの標準化のプロセスは、次のようになる。
- ITU-Rは、5Gの要求条件をまとめたIMTビジョン勧告(ITU-R勧告M.2083)を策定(2015年9月)。
- 3GPPは、このIMTビジョン勧告に示された5Gの要求条件をもとに、5Gに関する標準仕様を策定。
- 3GPPは、この標準仕様を含む5G技術提案書を、ITU-Rのもとに設置された、IMTシステム(移動通信システム)の検討を行っている専門家会合「WP5D」(Working Party 5D、5D作業部会)に提出。
- WP5Dは、3GPPから提出された5G技術提案書が5Gの要求条件を満たしているかどうかを審議し、OKならばITU-Rに提出。
- ITU-Rで最終的に確認し、5Gシステムの標準(勧告)を策定。
5G標準化のロードマップ
ITU-RのIMTビジョン勧告には、表3に示す中心的な「eMBB」「URLLC」「mMTC」の3つの利用シナリオも含まれており、5Gの標準化の内容が大きすぎるため、2つのフェーズに分割して標準仕様が策定されている。
表3 5G標準化のロードマップ:IMTビジョン(IMT‐2020)と3GPPの5G技術の標準仕様
ETSI ISG :ETSI(European Tele communications Standards Institute:欧州電気通信標準化機構)のISG(Industry Specification Group、新産業仕様策定グループ)。
MEC:Multi-access Edge Computing、マルチアクセス・エッジコンピューティング。当初は、Mobile Edge Computingと言われていたが、移動通信だけでなく固定通信からの複数のアクセスも含めて、マルチアクセス(Multi-access)という表現となった。具体的には、基地局(あるいは基地局の近くに)にサーバ(クラウド)を設置することによって遅延を短縮する。なお、MECは、エッジ・ クラウドあるいは分散クラウドとも呼ばれることもある。
出所 「3GPP Overview:グローバルモバイルシステム向けの標準化エコシステム」、エイドリアン・スクレイス(2018年10月17日)の資料をもとに編集部で作成
フェーズ1(リリース15)で策定された、無線インタフェース5G NRのうち、NSA(Non-Standalone)方式の場合は、既存の4G LTEのコアネットワークと5G NR(New Radio)を連携させて5Gを実現する(5G単独のシステムではない)。このため、5G NRと4G LTEが共存する形になるのでノンスタンドアロンと呼ばれる。
このように、NSAの場合は、4G(LTEコア)と5G(NRのNSA)が混在した移動通信システムになるが、3GPPはこのようなLTEを含んでいても、リリース15以降に標準化された技術は、すべて5Gシステムと呼ぶことを決定している。
一部説明が重複するが、表3と図3に、3GPPリリース15(2018年6月)と2019年12月完了予定のリリース16(フェーズ2)のロードマップを示す。なお、表3には、IoT市場への取り組みや、5G標準仕様に、3GPP以外で策定されたNFV(ネットワーク機能仮想化)やエッジコンピューティング(MEC)など機能の取り込みを含めた内容を示す。
図3 3GPPリリース15と2019年末のリリース16のロードマップ
出所 情報通信審議会資料1−5「第5世代移動通信システムの検討状況について」〔平成29(2017)年1月31日〕をもとに一部修正して編集部作成