3GPPリリース16完成!本命の「5Gコアネットワーク」が離陸へ<後編-1>
― リリース16の5GC(コアネットワーク)の特長 ―2021年2月1日 0:00
5Gコアネットワーク(5GC)を含む5Gフル仕様となる「3GPPリリース16」が、2020年7月に完成したタイミングを受けて、TTCオンラインセミナー「5G最新機能(3GPPリリース16)〜仕様概要、実現ソリューションと産業連携〜」(TTCおよびARIBによる共催)が開催された(注1)。セミナーでは、最前線で活躍する講師陣によって、移動通信システムの国際標準仕様を策定する3GPPの歴史的経緯から、3GPPのリリース15(5Gフェーズ1:基本仕様)、5G無線の性能向上や5G NPN(5G非公衆網)対応などの機能拡張を含むリリース16(フェーズ2:フル仕様)、更なる機能拡張に向かうリリース17までの最新動向が幅広く紹介された(弊誌2020年12月号「前編」を参照)。
前編に続いて「後編-1」では、後編-1では、リリース16の5GCの特長や具体的なアーキテクチャの全体構成、日本でもローカル5Gとして関心が高まっている2種類のNPN(非公衆網)などについてレポートする。
3GPPリリース16:5GCの特長と機能
〔1〕5Gコアネットワーク(5GC)の概要
KDDIの中野裕介(なかの ゆうすけ)氏注2は、「リリース16 コア特長機能概要」と題して、以下の内容について解説した。
- リリース16の位置づけ、リリース16の5Gコアネットワーク(5GC)の機能について、RAN(無線アクセス網)との関係
- リリース16のコア機能の全体像を掴むため、リリース16(5Gフェーズ2)で行われている5Gコアのアーキテクチャを決めるグループ(SA2)注3での検討内容の一覧(後出の表1)
- リリース16の主なコア機能:①SBA 高度化、②SMF・UPFのトポロジー拡張、③ネットワーク情報分析機能の高度化、④NPN(非公衆5G網)
〔2〕5Gの位置づけと5Gシステムの基本構成
最初に、中野氏の解説を理解するための前提として、現在普及している主な無線通信方式と5Gの位置付けを図1に示す。
図のように、5G(NR)は、3G(W-CDMA)や4G(LTE)よりも低消費電力、かつ低コスト化が図られており、さらにLPWA(低消費電力型・広域通信網)の領域へも機能を拡張している。また、日本でも関心の高い「ローカル5G」に代表される、5Gを企業向けの非公衆網(NPN:Non-Public Network)として利用可能な拡張仕様(5GにおけるNPN仕様、後述)も盛り込まれている。
さらに、リリース16(5Gフェーズ2)注4が完成したことによって、図2に示すような5Gシステム(イメージ)を構築することが可能となった。
図2 5Gシステムの2つの構成イメージ:5G NSA方式と5G SA方式
5G NR:5G New Radio、5G向けにリリース15で策定された端末と基地局間の新無線アクセス技術(無線インタフェース)。NSA(ノンスタンドアローン)とSA(スタンドアロン)という2つの無線インタフェースが規定された(本誌前編を参照)
NSA:Non-Standalone、5G 基地局と 4G(LTE) 基地局を併用して構築するネットワーク構成〔コアネットワークに、4G(LTE)コアネットワーク(EPC:Evolved Packet Core)を使用〕
SA:Standalone、5G 基地局と5GC(コアネットワーク)で構成するネットワーク
EPC:Evolved Packet Core、4G(LTE)コアネットワーク
RAN:Radio Access Network、無線アクセス網。端末と基地局間を無線で接続するネットワーク
出所 各種資料をもとに編集部で作成
▼ 注1
TTCオンラインセミナー5G最新機能(3GPP リリース16)」、2020年10月27日(ウェビナー)
▼ 注2
中野 裕介氏:KDDI株式会社技術企画本部 技術戦略部 標準戦略グループ グループリーダー。3GPP TSG-SA 副議長。
▼ 注3
SA2:SA(Service & System Aspects) Working Group 2、5Gのサービスとシステムアーキテクチャ仕様を策定するグループの第2作業グループ。
▼ 注4
これに対してリリース15は、「5Gフェーズ1」といわれる(本誌2020年12月号の前編を参照)。