リリース16のNPN(非公衆網)
〔1〕2種類のNPN:SNPNとPNI NPN
リリース16において、Industry 4.0(スマートファクトリー)向けの5Gネットワークとして仕様化された、5G NPN(Non-Public Network、非公衆5G網)は、正式には、「5GS Enhanced support of Vertical and LAN Services(Vertical_LAN)」と表現されている注8(前出の表1の上から5つ目の項目を参照)。
5G NPNについて、バーティカル(産業)&LANサービスとして利用する、「5G-ACIA」注9などの例があるが、これは、日本でもローカル5Gとして関心が高まっている、5G(公衆5G網)の仕様を非公衆5G網(NPN)として、企業で利用できるように策定された仕様である。
誌面の都合で詳細は割愛するが、参考までに、リリース16ではどのように仕様化されているかを図7に示す。
図7 リリース16における 2種類のNPN(Non Public Network)
gNB:gNodeB(gNode Base Station)、5G基地局
EPS:Evolved Packet System、4G(LTE)の移動通信システム
CAG:Closed Access Group、基地局が端末のアクセス権の制御を行うこと
出所 中野 裕介、「Rel 16 コア 特長機能概要」、TTCオンラインセミナー(2020年10月27日)をもとに編集部で一部加筆・修正
〔2〕NPNの展開:3つのオプション
5G NPNには、図7に示すようにSNPNとPNI NPNの2種類があるが、実際に展開する場合には、
- 完全に企業が独自に構築する場合(SNPN、表2④参照)
- 通信事業者から提供される場合(PNI NPN、表2④参照)
- 通信事業者のスライスとして提供される場合(PNI NPN)
の3つの方法(オプション)がある。
中野氏は、「通信事業者のスライスの1つとして、NPN(例:ローカル5Gのような使用方法)が提供される場合、NPNスライスに割り当てられているスライスID(識別子)で、NPNスライスの信号トラフィックを識別し、CAG機能(Closed Access Group、基地局が端末のアクセス権の制御を行う機能)を用いて、基地局へのアクセス制御が可能となります。例えば、図8にNPNの展開例を示しますが、これは、通信事業者が、スライス#1を公衆5G網として提供し、スライス#2をNPN(PNI-NPN。日本ではローカル5G)として提供しているケースです」と述べた。(「後編-2」に続く)
図8 NPNの展開例(通信事業者からスライスとしてNPNが提供される場合)
HMD:Head Mounted Display、ヘッドマウントディスプレイ(頭部装着ディスプレイ)
出所 中野 裕介、「Rel 16 コア 特長機能概要」、TTCオンラインセミナー、2020年10月27日
▼ 注8
3GPP Release-16「5G for Industry 4.0」
▼ 注9
5G-ACIA:5G Alliance for Connected Industries and Automation、コネクテッド産業とオートメーションのための5Gアライアンス。5G-ACIAは、5Gの産業用(バーティカル)利用のあり方を検討することを目的として、2018年4月に結成されたグローバルフォーラム(会員メンバー数は2020年11月現在で61社)。弊誌2020年12月号の「前編」も参照。