3GPPにおけるリリース15/16/17の位置づけ
中野氏は、3GPPのリリース15、16、17における5G仕様の全体的な進化・発展を、ITU-Rの3つの利用シナリオ(eMBB、mMTC、URLLC)に対応付けて解説した(図3)。
図3 3GPPにおけるリリース15/16/17の位置づけ
LPWA:Low Power Wide Area、低消費電力型・広域無線網(IoT端末の同時多数接続向けの通信方式)。セルラー系LPWAとしてはNB-IoT、LTE-M(別名:eMTC)、非セルラー系LPWAとしてはLoRaWAN、Sigfox、ZETA、ELTRES、IEEE 802.11ah、Wi-SUN等がある
出所 中野 裕介、「Rel 16 コア 特長機能概要」、TTCオンラインセミナー(2020年10月27日)をもとに一部日本語化して編集部で作成
図3からわかるように、
- リリース15(5Gフェーズ1)では、eMBB(高速大容量通信)をメインに、mMTC(IoT端末の多数同時接続)などが仕様化され、
- リリース16(5Gフェーズ2)では、URLLC(超高信頼・低遅延)やmMTC注5の機能拡張などが引き続き行われた。
- リリース17では、3つのシナリオのさらなる高度化(図3の正三角形をさらに拡大)や、ユースケースの拡大などが審議されている。
リリース16の主要な機能とその分類
リリース16では、表1に示す約20個に分類した作業項目(仕様化内容)が審議されているが、図4は、表1に示した作業項目のうち主なものを、図3の3つのシナリオに対応付けしたものである注6。
表1 3GPPリリース16の主要機能〔作業項目(Work Item)〕の主な内容(SA2担当)
NWDAF:Network Data Analytics Function、ネットワーク情報分析機能。リリース17で継続して議論が行われている
リアルタイム通信:LAN標準化組織である、IEEE 802委員会のIEEE 802.1ワーキンググループで標準化されたTSN(Time Sensitive Networking、リアルタイム対応のイーサネット規格)の5GCへの統合。https://www.ieee802.org/ および https://1.ieee802.org/tsn/
バックグランド転送ポリシー:端末がデータトラフィックを送信する「位置」や「時間帯」の情報
SA2:SA Working Group 2、3GPPのSA(Service & System Aspects、5Gシステムアーキテクチャ仕様等の担当グループ)の作業部会2
出所 各種資料より編集部で作成
図4 3つのシナリオに3GPPリリース16の主要な機能をマッピング
共通:RAN(アクセス網)とCore(コア網)両方の連携によって提供可能となる機能 RAN:Radio Access Network、無線アクセス網
※他の略語は本文および各表を参照のこと。
出所 中野 裕介、「Rel 16 コア 特長機能概要」、TTCオンラインセミナー(2020年10月27日)をもとに一部日本語化、加筆・修正して編集部で作成
図4の中央と右上に示す4つ橙色の矢印は、リリース16の5GCの4つの機能、すなわち表2に示す仕様化項目「①SBA高度化」「②SMF・UPFのトポロジー拡張」「③NW情報分析機能高度化(eNA)」「④Non-Public NW(NPN)」である。なお表2には、NPNとも関係するため、⑤NW Slicing(ネットワークスライシング)を追加している。
表2 リリース16の主要機能(図4の中央の紺色部等)の説明
出所 各種資料より編集部で作成
▼ 注5
リリース14〔4G(LTE)〕で仕様化されたNB-IoTやLTE-MなどのセルラーLPWA(通信事業者が提供するLPWA、セルラーIoTともいわれる)で、IoT端末の多数同時接続をカバーする。
▼ 注6
リリース16は、ITU-Rの3つのシナリオに対して、3GPPがコミット(約束した)したIMT-2020(5Gの正式な標準名)の要求条件を、すべてカバーした内容となっている。