[特別レポート]

企業のDXを加速させるシスコの「5G/ローカル5G/プライベート5G」戦略

― 実環境を再現した「5Gショーケース」でオープンな検証環境を提供! ―
2021/03/07
(日)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は、企業ネットワークとサービスプロバイダー(通信事業者)ネットワークを統合した、「シスコ 5Gショーケース」を2020年11月、東京・六本木の本社オフィスのCPOC(注1)ラボに開設し、その運用を開始した。
従来の4G(LTE)に比べ、飛躍的に性能を向上させて幅広い応用が期待されている5G(パブリック5G)は、5Gコア(5GC)ネットワークを含むフル仕様(5G SA方式)の標準化が2020年7月に完了した。日本の各通信事業者は、2021〜2022年度にかけて5G SA方式(現在は5G NSA方式)のサービスを開始する(注2)。
ここでは、IoTやAIと密接に連携する企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)基盤としても活用できる5G新時代に、「シスコ 5Gショーケース」を活用してどのように5Gの価値を創造し、最大化しようとしているのか、その全体像を紹介する。

5GによってDXを加速!

〔1〕シスコジャパンの重点戦略

 シスコは、すでに2020年10月、「2021年度シスコジャパン事業戦略」注3で、「日本のカントリー デジタイゼーション」について6つの注力分野を発表した(表1)。これに続き、2020年11月12日、「5Gショーケース」開設について発表した注4

表1 2021年度シスコジャパン重点戦略:6つの注力分野

表1 2021年度シスコジャパン重点戦略:6つの注力分野

K12:K Twelve(ケイ・トゥエルブ)、米国などの英語圏を中心に、幼稚園1年と12年間の初等・中等教育を含めた13年間の教育期間(義務教育)を表す無償の教育制度
出所 「2021年度シスコジャパン事業戦略」、2020年10月8日

ここでは、「5Gインフラストラクチャ」を、「トラベルツーリズム&トランスポーテーション(TT&T)」「デジタルワークプレース」「パブリックセーフティ」「インダストリー4.0」「デジタルスクール」の5分野を実現するための重要な共通基盤と位置付けた(図1)。

図1 2021年度シスコジャパン重点戦略:日本のカントリー デジタイゼーション

図1 2021年度シスコジャパン重点戦略:日本のカントリー デジタイゼーション

出所 シスコシステムズ合同会社、「シスコ 5Gショーケース記者説明会」、2020年11月12日

表2 「シスコ 5Gショーケース」への参画企業

表2 「シスコ 5Gショーケース」への参画企業

出所 シスコシステムズ合同会社、「シスコ 5Gショーケース記者説明会」(2020年11月12日)をもとに作成

 シスコ副社長 情報通信産業事業統括(当時)注5の中川 いち朗(なかがわ いちろう)氏は、「すでに、5Gのインフラビジネスにおいてシスコは、サービスプロバイダー向けのルータ市場の約75%のマーケットシェアをいただいていますが、5Gの本格的な展開を推進するには、コンシューマ分野のサービスに加えて、企業あるいは公共機関での活用、あるいはユースケースの創造が必須となってきました。今回オープンした5Gショーケースは、“2021年度 シスコジャパン重点戦略:6つの注力分野”において、5Gの活用と実践をドライブするもので、日本のデジタル化の支援に貢献していきたい」と、同ショーケースの狙いを述べた。

 シスコは、「5Gショーケース」を5GによるDXを加速させるために、企業や通信事業者、エコパートナー(表2)とともに、ソリューションを共創する場を提供していく。

〔2〕4Gと一線を画す5G時代

 現在、ユーザー(企業側)は、ニューノーマルに向けたDX化が待ったなしの状態となっており、5G時代への期待は日々高まっている。

 3Gや4G(LTE)時代のモバイル網は、あくまで端末への接続性を提供することが中心であった。しかし、5G時代のモバイル網では、デジタルとリアルを融合した新しいビジネスの価値やサービスが創造できるプラットフォームになることが期待されている。そのため5Gは、これまでの3G/4Gなどとは一線を画すものとなっている。

 5G時代では、超高精細な8K映像配信からクラウドゲーム、教育・遠隔医療、IoT/AI、スマート工場、スマートシティ、自動運転(MaaS:Mobility as a Service)、農業・運輸、公共サービスなど、あらゆる分野で新しい価値を提供できるとされている。

 すでにシスコは、大手企業や自治体とともにローカル5Gのプロジェクトやトライアルを開始しているが、5Gによって新たな価値を提供するためには、企業や業界を超えたデジタル連携が求められる。このため、サービスプロバイダーと企業側のネットワークが、エンドツーエンド注6でセキュアに連携し、その運用の自動化や可視化を実現する必要がある。そのためには、双方のネットワークアーキテクチャの変革が求められる。

〔3〕日本初の5Gショーケース

 シスコが開設した5Gショーケースは、サービスプロバイダーの新しい5Gネットワークと、ニューノーマルに向けた新しい企業ネットワークを、エンドツーエンドでデジタル連携した、日本初のオープンラボ・ショーケースとなっている(図2)。

図2 シスコが目指す5Gショーケースの開設の背景

図2 シスコが目指す5Gショーケースの開設の背景

出所 シスコシステムズ合同会社、「シスコ 5Gショーケース記者説明会」、2020年11月12日

 シスコは同ショーケースを、企業ユーザーなどに「共創の場」として提供することによって、5GによるDXを加速する。


▼ 注1
CPOC:Customer Proof of Concept、シスコ東京本社の検証センター

▼ 注2
総務省「5G(SA方式)時代におけるネットワーク提供に係る課題の検討」、令和3(2021)年1月19日

▼ 注3
「2021年度シスコジャパン事業戦略」、2020年10月8日

▼ 注4
シスコシステムズ合同会社、「シスコ 5Gショーケース記者説明会」、2020年11月12日

▼ 注5
2021年1月25日付で代表執行役員社長に就任。

▼ 注6
エンドツーエンド(End to End):「端(エンド)から端(エンド)まで」の意。通信分野で、「端末(エンド)」⇔「ネットワーク」⇔「端末(エンド)」のように、ネットワークを介して2者(両端:End to End)が通信を行う形態を指す。
例えばインターネットの場合、同アーキテクチャをもとに、アプリケーション処理や誤り検出などの面倒な処理はできるだけ端末側(エンド)で行い、ネットワーク側には最低限の処理機能をもたせて、ネットワークの柔軟性や拡張性を備えた大規模なネットワークを実現している。

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