[特別レポート]

5G/ローカル5Gとの共存時代!Wi-FiはWi-Fi 6/ 6EからWi-Fi 7へ

― 日本でも新たな6GHz帯の周波数を審議開始 ―
2021/07/01
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

Wi-Fiと5Gはどこが違うのか?

 Wi-Fiと5Gは、基本となるRF(Radio Frequency、無線)技術には大きな違いがないが、この2つの技術には決定的に違う点がある。

〔1〕4G(LTE)や5Gの場合

 LTEや5Gなどの、モバイルキャリア(移動体通信事業者)が使用している周波数は、国(総務省)によって管理された、ライセンスバンド(免許要周波数帯)を使用する。

 このライセンスバンドを使用して提供される5GやLTEサービスでは、モバイルキャリアが基地局(アクセスポイント)を建てて維持し、通信の輻輳(混雑)やチャネル間の干渉などが起きないようシステム構築をしているため、サービス品質も高くなっている。

 一方、Wi-Fiの場合は、アンライセンスバンド(免許不要周波数帯)を使用する。言い方を換えれば、誰もがどこでも使用でき、さらに安価で比較的入手しやすい基地局(アクセスポイント)などの機器を使う。ここが5Gとは違う点である。

 また、Wi-Fiは、Wi-Fiアライアンスによって、Wi-Fi機器同士の相互接続性が担保されており、有線LAN(Ethernet)とも相性がよい。最近ではメッシュWi-Fi注5が普及しており、いろいろな選択肢がある。

〔2〕5G/LTEとWi−Fiでは、電波の出力が異なる

 電波の出力についても、5G/LTEとWi−Fiでは異なる。例えば、5G/LTEの携帯基地局からの電波は、19W(19,000mW)の出力であるが、Wi-Fiでは200mWと1/100程度しか出力がなく、パワーが小さい。そのため、通信範囲(カバレッジ)などを含めて、利用方法がかなり変わってくる。

 一方、伝送速度について両者は、技術的革新によって帯域(伝送速度)が急速に大きくなり、ともにギガ(Gbps)を超える状況となっている。

電波法の改正でWi-Fi向けに5GHz帯のチャネルが144ch追加

 ここで、Wi-Fiの帯域(伝送速度)に大きな影響を与える周波数(無線リソース)の法改正について、簡単に整理しておこう。

〔1〕144ch(チャネル)部分が使用可能

 これまで多くのWi-Fi機器が図4のような周波数帯を利用しているが、法改正(図4の下部脚注参照)によって、日本でも図4に示す144ch(チャネル)部分が使用できるようになった。これによって、ネットワークを構築する際に非常に有利となった。

図4 電波法の改正:5GHz帯のチャネル144chを追加

図4 電波法の改正:5GHz帯のチャネル144chを追加

*)電波法施行規則等の一部を改正する省令(令和元年総務省令第27号) (施行日): 令和元年7月11日、144chの利用、80MHzチャネル幅における利便性向上
**)電波法施行規則等の一部を改正する省令(平成30年総務省令第39号) (施行日): 平成30年6月29日、屋外利用の認可(条件付き)
出所 大江将史「Wi-Fi(1)“正体”をあっさりと理解する~今後に向けての再確認」、Interop Tokyo 2021、2021年6月9日

 すなわち、図4に示す40MHzの最後のチャネル番号10の部分(青色で囲んだ部分)と、80MHzの最後のチャネル番号5の部分(赤色で囲んだ部分)が使用できるようになり、これによって、通信時に衝突が発生しないチャネルの組み合わせが、20MHz幅だけではなく40MHz幅や80MHz幅においても、より容易に組めるようになった。

〔2〕6GHz帯をWi-Fiで使用する議論を開始

 2021年3月、総務省主管の情報通信審議会情報通信技術分科会において、省電力の無線LANシステム(いわゆるWi-Fiのこと)の高度化に向けた対応をすることによって、Wi-Fiが新たに、どのような使い道(ユースケース)があるかなどの検討が開始された注6。つまり、図5に示すような、6GHz帯をWi-Fiで使用するという議論である。

 日本における6GHz帯(5925〜7125MHz)は、図5に赤で示した検討対象の領域で議論が進められている。しかし問題は、赤点線で囲っている部分が、すでにさまざまなサービスや技術で利用されている(例:放送事業など)ため、その調整が求められる点である。

図5 無線LANに関する周波数割当て方針:無線LANのさらなる高度化に向けた対応〔令和2(2020〕年11月13日公表。周波数再編アクションプラン(令和2(2020)年度第2次改定版)〕

図5 無線LANに関する周波数割当て方針:無線LANのさらなる高度化に向けた対応〔令和2(2020〕年11月13日公表。周波数再編アクションプラン(令和2(2020)年度第2次改定版)〕

出所 https://www.soumu.go.jp/main_content/000742780.pdf

 このように、いろいろな課題はあるが、日本でも「Wi-Fiで6GHz帯も使えるようになる」という議論が開始されていることから、関係者の間で期待が高まっている。後述するが、すでに欧米ではWi-Fi 6に、6GHz帯という新しい周波数帯を使ったWi-Fi 6E注7機器が出荷され、インテルなどがパソコンメーカー向けにWi-Fi 6E対応のカードを出荷するなど、普及し始めている。


▼ 注5
メッシュWi-Fi:「メッシュ」とは「網の目」のこと。複数のルータ(中継装置)が互いに対等な関係で網の目(mesh)状の伝送経路を形成し、データを転送する方式。このメッシュネットワークを、Wi-Fi機器で構成する場合、「メッシュWi-Fi」といわれる。

▼ 注6
https://www.soumu.go.jp/main_content/000742780.pdf

▼ 注7
Wi-Fi 6E:Wi-Fi6の拡張版(Extended)のこと。Wi-Fi 6との違いは、Wi-Fi 6が2.4GHz帯/5GHz帯であるのに対して、Wi-Fi 6Eでは、2.4GHz帯/5GHz帯/6GHz帯の3つの帯域を使用できること。ただし、Wi-Fi 6Eの基本的な仕様は、6GHz帯が使える以外は、Wi-Fi 6と基本的に同じである。

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