EU離脱後の英国の気候変動に対する取り組み
図2 英国のエネルギー白書の表紙
出所 https://www.gov.uk/government/publications/energy-white-paper-powering-our-net-zero-future
積極的に気候変動への取り組みを進めるEUから2020年に離脱した英国も、今回のG7、そしてCOP26の議長国として、気候変動対策に関する積極的な取り組みを行っている。
その一環として、2020年12月14日に公開されたのが「エネルギー白書:ネットゼロの未来に向けて」(Energy white paper: Powering our net zero future)注11である(図2)。
同日に発表されたプレスリリース注12によると、この白書は、産業、輸送、建物からの排出量を2億3,000万トン削減するために、今後10年間で英国政府が取るべき具体的な手段を示したものだとされている。具体的には、
- 今後10年間で発電や炭素回収・利用・貯蔵、水素などの大規模なインフラプロジェクトにおける雇用も含め、最大22万人の雇用を支援すること
- 化石燃料に依存してきたエネルギーシステムから脱却すること
- 化石燃料依存から脱却することで、増加する電力使用量をまかなうために、洋上風力発電を含めた再生可能エネルギーを活用すること
などが示されている。
また、EU離脱に伴い、EU域内におけるCO2の排出量取引制度注13であるEU ETS(European Union Emission Trading Scheme、欧州連合域内排出量取引制度)に代わる制度としてUK ETS(UK Emissions Trading Scheme、英国排出量取引制度)を2021年1月1日に設立し、英国の企業が排出量取引を継続し、運用を継続的に行えるような仕組みも提供している。
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世界の中でも先進的な取り組みを進める欧州や英国の取り組みが、今後開催されるCOP26などを通して、世界各国にどのような影響を与えるのか、引き続き注目していきたい。(終わり)
筆者Profile
新井 宏征(あらい ひろゆき)
株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役社長
SAPジャパン、情報通信総合研究所を経て、現在はシナリオプランニングの考え方を応用し、事業と組織の両面からクライアントの変革を支援するコンサルティング活動に従事。東京外国語大学大学院修了、Said Business School Oxford Scenarios Programme修了。
インプレスSmartGrid ニューズレター コントリビューティングエディター。
▼ 注11
https://www.gov.uk/government/publications/energy-white-paper-powering-our-net-zero-future
▼ 注12
Government sets out plans for clean energy system and green jobs boom to build back greener - GOV.UK
▼ 注13
排出量取引制度とは「各企業・国などが温室効果ガスを排出することのできる量を排出枠という形で定め、排出枠を超えて排出をしてしまったところが、排出枠より実際の排出量が少ないところから排出枠を買ってくることを可能にし、それによって削減したとみなすことができるようにする制度。(出所 https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/1138.html )
EU ETSは、この仕組みをEU内で行っていたものだが、EU離脱に伴い、英国独自の制度であるUK ETSに移行した。