世界におけるCO2排出量の推移
〔1〕IEAの発表:戦後最大の減少率
IEA(International Energy Agency、国際エネルギー機関)が2021年3月2日に発表した記事注1によると、2020年の世界におけるエネルギー関連のCO2排出量は、第二次世界大戦(1939〜1945年)以降で最大の減少率である5.8%を記録した(図1)。
図1 世界におけるエネルギー関連のCO2排出量の推移
出所 Global Energy Review: CO2 Emissions in 2020 − Analysis - IEA
2019年の排出量が33.4ギガトンCO2だったのに対して、2020年は31.5ギガトンCO2にまで減少した。これは、化石燃料の需要が大幅に減少したことが影響している。具体的な減少幅を見ると石油が8.6%、石炭は4%となっており、特に石油の減少幅は過去最大となっている。これは、COVID-19の拡大によって多くの経済活動が停滞したことが影響したもので、石油の需要の減少のうち、道路交通活動の低下が50%、航空部門の低迷が約35%を占めている。
しかし、このCO2排出量の大幅な減少は一時的なものに終わる可能性が高い。同じくIEAが2021年4月20日に発表したプレスリリース注2によると、2021年のエネルギー関連のCO2排出量は、史上2番目に大きな増加となる可能性があることが発表されたからだ。
〔2〕2021年のCO2排出量は2010年以来、最大の増加量
IEAが最新の国別のデータなどをもとに分析した結果、2020年のコロナ禍における経済危機からの回復を受け、電力部門の石炭使用が復活していることなどが影響し、2021年のCO2排出量は33.0ギガトンCO2にまで増加すると見込まれており、2020年から1.5ギガトンCO2の増加(=33.0ギガトンCO2−31.5ギガトンCO2)となる。これは2010年以来、最大の増加量だと、IEAは指摘している。
このプレスリリースの中でIEAのエグゼクティブ・ディレクターであるファティ・ビロル(Fatih Birol)氏は、世界中の政府がCO2排出量削減に迅速に取り組まなければ、2022年はさらに悪い状況になる可能性を指摘したうえで、2021年4月22日から始まった米国のバイデン大統領主催の「気候サミット」(Leaders Summit on Climate)注3が、英国のグラスゴーで2021年11月1〜12日に開催される「COP26」(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)に先駆けて、明確かつ迅速な行動を約束する重要な機会になる、とコメントした。
▼ 注1
Global Energy Review: CO2 Emissions in 2020 - Analysis - IEA
▼ 注2
Global carbon dioxide emissions are set for their second-biggest increase in history - News - IEA
▼ 注3
サミット名称を直訳すると「気候に関するリーダーズサミット」となるが、本稿では外務省での表記に従い「気候サミット」という表記で統一する。以下を参照。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page6_000548.html