脱炭素に求められる自動車の転換シナリオ
次に、IGESビジネスタスクフォース研究員 山守正明氏の講演「脱炭素に求められる自動車の転換シナリオ」を要約して紹介する。山守氏は、英国グラスゴーで開催されたCOP26注5の内容を踏まえて、脱炭素の観点から、なぜ今、EVシフトが必要なのかを解説した。
今回のCOP26では、IPCC報告書などの分析結果なども含めて検討が行われ、パリ協定における「1.5℃と2.0℃の違い」も浮き彫りにされ、「1.5℃目標の実現」に向けて大きく舵が切られた注6。
〔3〕1.5℃と2.0℃で異なる被害への影響
それでは、1.5℃と2.0℃の違いがもたらす被害は、どれほど異なるのだろうか。その違いを示したのが図3である。
図3 1.5℃と2℃の違いがもたらす影響は甚大
[出典]Climate Council(2021) THE DIFFERENCE BETWEEN 1.5 AND 2 DEGREES WARMING に IGES 加筆(データは IPCC 1.5℃ 報告書ベース)、詳細は IPCC第6次報告書(Chapter5 Abrupt Changes and Tipping)を参照。
出所 山守正明、IGES、「脱炭素に求められる自動車の転換シナリオ」(2021年12月2日)、JCLP/IGES共催 EV公開ウェビナー「加速するEV転換への世界的潮流」より
1.5℃と2.0℃の温度差は、約1.3倍(=2.0℃÷1.5℃)の違いであるが、図3に示すように1.5℃から2.0℃に上昇すると、サンゴ礁の減少は1.4倍、森林破壊は2倍、さらに夏季における氷床融解(南極やヒマラヤ山脈等の氷・凍土などの融解)は10倍にも達してしまう。さらに、このような気温上昇に伴い、突然の不可逆的な変化(変化する前の状態に戻せない変化。ディッピングポイントともいわれる)へ達するリスクが増大する点も、見逃せない。
例えば、永久凍土(2年間以上にわたって温度0℃以下の土壌や地盤)の融解が進み、地下に眠っている大量のメタン(CH4)注7が放出される恐れがあり、人間の手に負えないドミノ倒し現象を起こす可能性がある。
〔4〕メタンの削減にGMPを発足
このため、COP26開催中の11月2日、CO2の20倍以上の温室効果があるとされているメタンを削減する国際的な枠組み「GMP」(Global Methane Pledge、グローバルメタン誓約)注8が、米国とEU(欧州連合)の呼びかけで発足した。
GMPには、日本を含む103カ国と地域が参加した(排出量の多い中国やロシアは不参加)。GMPでは、2030年までに少なくとも30%削減(2020年比)することを目標に掲げることで一致した注9。
その後2021年11月10日、CO2排出量第1位の中国と第2位の米国は、メタンの排出量削減に向けた協力などを盛り込んだ共同宣言を発表し、2022年前半に両者の会合を開催して具体的な協議を行うことになった。