FIT制度とFIP制度の併存時代へ
日本では、太陽光発電や風力発電などの再エネは、既存の火力発電などに比べて発電コストが高いため、なかなか導入が進まない原因となっていた。
これを解決するため、「固定価格買取(FIT)制度」注2が2012年7月に導入され、以降、特に住宅用(出力10kW未満)と事業用(出力10kW以上)の太陽光発電の導入が加速度的に進んだ。
しかし、「2050年カーボンニュートラル」を実現するためには、さらに再エネを導入拡大し、主力電源化していくことが求められている。そのため、新たに2020年6月、「FIP制度」注3の導入が決定された。そしてこの制度は、2022年4月1日からスタートする。FIP制度の期限は、「事業用FIT」と同じく、FIP認定設備が運転開始してから20年だ。
太陽光:事業用は9円/kWh台、住宅用は17円/kWhへ
政府が2022年2月4日に発表した内容のうち、ここでは、太陽光発電に関する次の2つについて見てみよう。
- 従来からのFIT制度と2022年度から開始するFIP制度における、2022年度の太陽光発電の入札の上限価格
- 2023年度の入札対象外のFIT価格に関する方針
〔1〕住宅用と事業用の太陽光発電
表1に示すように、今回、政府からは、①住宅用太陽光発電、②~⑥事業用太陽光発電、⑦入札制度の内容が発表された。
表1 令和4年(2022)度以降の太陽光発電のFIT調達価格・FIP基準価格
【注:調達期間/交付期間:10kW未満(住宅用)は10年、10kW以上(事業用)は20年)】
出所 経済産業省/調達価格等算定委員会、「令和4年度以降の調達価格等に関する意見」〔令和4(2022)年2月4日〕、別紙1を一部加筆修正して作成
- 住宅用太陽光発電:表1①
①10kW未満の住宅用太陽光発電のFIT調達価格は、2022年度は前年度(2021年度)よりも2円低い17円(10kW未満の場合に限り消費税込み)/kWh、2023年度は16円/kWhである。 - 事業用太陽光発電:表1②~⑥
②10kW以上50kW未満の事業用太陽光発電の場合は、2022年度が11円/kWh(税別)、2023年度は10円/kWh(税別)となる。
③50kW以上250kW未満の事業用太陽光発電は、FITとFIPを選択することができる。それぞれ2022年度は10円/kWh、2023年度は9.5円/kWhに引き下がる。
④250kW以上500kW未満の場合もFITとFIPを選択できるが、FITの場合は入札制度が適用される。また、FIPの基準価格は、2022年度は10円/kWh、2023年度は9.5円/kWhに引き下がる。
⑤500kW以上1,000kW(=1MW)未満の場合は、2022年度のみFITとFIPを選択することができる。FITの場合は入札制度、FIPの場合は10円/kWhが適用される。その後2023年度はFIPのみでの入札になる。
⑥1,000kW(=1MW)以上の場合は、FIPのみで入札となる。 - 入札制度の内容:表1⑦
⑦2022年度の太陽光発電の入札制度は、表1⑦に示すように、2021年度と同様に4回実施し、供給価格の上限価格も事前に公表して実施される。2022年度の入札における上限価格は、1回目が10.00円/kWh、2回目が9.88円/kWh、3回目が9.75円/kWh、4回目が9.63円/kWhと、9円台まで引き下げられている。
* * *
再エネの自立化を目指すFIP制度のスタートは、再エネ活用の歴史的転換点であるといえよう。再エネは、FIT制度から転換したFIP制度の下で電力市場への統合が進んで初めて、既存の他電源と共通の環境で競争できるようになる。
▼ 注1
再エネ特措法:2011年8月に制定。2012年7月から施行(導入)されFIT制度が導入された。2017年4月から国民負担の抑制などを目指して「改正FIT法」を施行。
令和4(2022)年4月1日から、再エネ特措法(改正FIT法)は大幅に改正され、「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」となり、FIP制度が導入される。
▼ 注2
固定価格買取(FIT)制度:FITはFeed-in Tariffの略。再エネ導入の拡大を目的に、再エネ設備によって発電された電気を、あらかじめ決められた価格(固定価格)で買い取るよう、電力会社に義務付けた制度。
▼ 注3
FIP制度:FIPはFeed-in Premiumの略。再エネ発電事業者が卸市場などで売電した際に、その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額:供給促進交付金)を上乗せすることで再エネ導入を促進する制度。