配電事業ライセンス制度と地域マイクログリッド
〔1〕配電事業を独立したビジネスへ
次に、2021年4月1日からスタートした「配電事業ライセンス制度」を見てみよう。
これまでは電気を送る送電網も配電網も、一般送配電事業者(旧大手電力会社から法的分離で設立)によって管理・運営されてきた。しかし、新しく制定された「エネルギー供給強靱化法」では、そのうち需要家に近い配電網を一般送配電事業者から切り離し、「配電事業」として独立したビジネスができるよう、法律で位置付けられた(前出の表1)。
このため、国が「配電事業ライセンス制度」を設けて、一般送配電事業者が新規参入事業者に対して、既存の配電網を譲渡あるいは貸与(貸し出し)し、配電網を運用・管理できるようになった。配電事業ライセンス制度は、2022年4月1日から開始された。
〔2〕ビジネスの拡大と期待される効果
表5に、新しい配電事業ライセンス制度と、配電事業者(DSO:Distributed System Operator)の主な義務を示すが、この制度によって期待される効果として、非常時における電力の安定した供給やレジリエンスの向上などがある。
表5 配電事業ライセンス制度と配電事業者の義務
出所 資源エネルギー庁「配電事業ライセンスについて、令和4(2022)年1月25・26日の7ページを一部修正して編集部が作成
具体的には、例えば、地震や台風などの災害(停電)時等に、その災害地域を系統から切り離し(オフグリッドし)、その地域内で、地域マイクログリッド(本誌2022年4月号特集参照)を構成し、系統とは独立して運用することによって、配電エリア内の需要家に対して電力供給サービスを継続することが可能となる。
この他、配電事業ライセンス制度によって、電力システムの効率化や、再エネ等の分散電源の導入促進、地域サービスの向上につながることなどが、期待されている。
この配電ライセンス制度は、今後、地域マイクログリッドなどの普及に伴ってビジネスが拡大していくと予想されている。しかし、地域の自治体や住民などへの説明や合意に時間がかかる面があるため、配電事業ライセンスへの申請は未だなく、これからとなっている(2022年4月末現在)。
〔3〕配電事業における2つの詳細設計
なお、災害時にも停電などを回避できるレジリエントな効果が期待されている、地域マイクログリッドなどを構築・運用する「配電事業」の詳細設計に当たっては、図3に示す、
- 緊急時独立運用型(例:地域マイクログリッド)
- 送電下位系統の混雑管理型(例:6.6kV配電系統への逆潮流の管理)
などの検討が行われ、配電事業への新規参入が促進されている注9。
図3 配電事業者(DSO)の2つの類型(基本形のイメージ)
出所 資源エネルギー庁「配電事業ライセンスについて、令和4(2022)年1月25・26日を一部修正して編集部が作成
▼ 注9
持続可能な電力システム構築小委員会、第二次中間取りまとめ(案)、2021年6月