2050年カーボンニュートラルに実現に向けて、「GXリーグ」(本誌今月号の15ページ参照)が設立されるなど、日本でもGX(グリーントランスフォーメーション)への取り組みが、経営基盤強化の重要テーマの1つとして位置付けられるようになってきた。このような背景の下、NTTデータ(東京都東京都江東区)と旭化成(東京都千代田区)は、サプライチェーンの温室効果ガス(GHG)排出量の管理を可視化する、「最終製品別CFP管理基盤」(図)を共同開発した。この管理基盤は、スコープ1、2、3を網羅したカーボンフットプリント(CFP)注1の管理プラットフォームだ。すでに旭化成の機能材料事業部では、この「管理基盤」を2022年4月から本格運用しており、5月から顧客にCFPデータの提供を開始する。
図 製造プロセスを網羅した最終製品別のCFP管理イメージ
現在、脱炭素経営に向けて、企業におけるGHG排出量の管理ニーズが高まっており、①工場など自社活動からのCFP(スコープ1、2)に加え、②購入原料などに含まれる自社外のCFP(スコープ3)を網羅したサプライチェーン全体の総排出量の把握が求められている。そのため、CFPの管理は、従来のような「工場別など自社内の管理に適した単位」ではなく、「会社間の管理に適した最終製品別の単位」で行う必要性が出てきた。同基盤では、調達原料や外注加工のスコープ3を含む製造プロセス全体を網羅し、最終製品別のCFP算出を行うことができ、さらに自社のCFPに価格を付けるICP注2を活用してCFPを財務情報として数値化し、投資判断の指標として使うことも可能だ。
NTTデータは、今後、製造業を中心とした多様な業種に対して、2025年度末までに20件以上の受注を目指している。
注1 CFP:Carbon Footprint of Products、商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出されるGHG排出量を、CO2に換算して定量的に算定したもの。
注2 ICP:Internal Carbon Pricing、企業等が内部的に使用する炭素価格。企業が独自に自社の炭素排出量に価格を付け、何らかの金銭価値を付与することによって、企業活動を意図的に低炭素に変化させることができる。