ホンダ:次世代FC(燃料電池)システム
図3 ホンダと米国GMが共同開発する次世代FCシステムのイメージ
出所 編集部撮影
本田技研工業(東京都港区。以下、ホンダ)は、「The Power of Dream」をテーマに環境(Environment)を重視した出展であった。
水素社会実現に向けたFC(Fuel Cell、燃料電池)の本格的な取り組みや、第2世代の着脱式可搬バッテリー(Honda Mobile Power Pack e:、2個搭載)と電動三輪スクーター(GYRO e:)の展示などが行われた。
ホンダはこれまで、水素社会実現に向けたFC技術の本格的な普及を目指し、安価で高耐久性を実現した次世代FCシステムを先進的にリードしてきた。
図3は、FCパワーユニットプロトタイプを中核に据えた、米国ゼネラルモーターズ(GM)との共同開発による、次世代FCシステムのイメージである。図3に示すように、両社はFCシステムを乗用車はもとより、バスやトラックなど多用途に展開しながら、水素利用の拡大を目指している。
写真4(1)には、FC定置電源(データセンターのバックアップ用)の例を、写真4(2)では、いすゞ自動車と共同研究中のFC大型トラックの例を示す。
写真4 多用途に展開するホンダのFCシステム
出所 編集部撮影・作成
デンソー:2035年カーボンニュートラルを目指す製品・技術の展示
デンソー(愛知県刈谷市)は、2035年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、「モノづくり」「モビリティ製品」「エネルギー利用」の3領域全体で、その実現に向けて取り組んでいる(表1)。
表1 デンソーの2035年カーボンニュートラルを目指す環境への取り組み
出所 「環境戦略」、株式会社デンソー 経営役員CCRO 篠原 幸弘、2021年5月26日
〔1〕車両から社会に繋がるエネルギーマネージメントを実現へ
特に「モビリティ製品」においては、全モビリティの電動化を見据えたブランド「ELEXCORE」(エレックスコア)を立ち上げ、幅広い領域をカバーするシステムや製品をラインアップし、電動化製品の普及を通じて、環境負荷の低減に貢献していく、としている(図4)。
図4 デンソーの電動車のシステム戦略
〔2〕車両搭載性の向上を実現した
新型インバーターとSiCパワー半導体
従来のハイブリッド4輪駆動車が、前後に2種類のインバーターを搭載しているのに対して、デンソーの新型インバーター(写真5)では、内部部品のパワースタック部やコンデンサ部、リアクトル部などを小型化して一体化することで、1つのインバーターで車両搭載性の向上を実現した。
また同社は、SiC(炭化ケイ素)パワー半導体部品(MOSFETとダイオード、写真6)を新規開発し、これを搭載した次期型昇圧用パワーモジュール(写真7)の量産を開始している。
写真6 SiCパワーデバイス(左側)とSiCパワー半導体ウエハー(右側)
従来(シリコン材料)と比較して,電力損失を80%低減し、車両燃費の向上に貢献。デンソーのSiCパワー半導体は、トレンチ(ゲート)型(ウエハーの表面から溝を掘ってゲート電極を埋め込む方法)を採用した独自構造と加工技術で、厳しい車載環境下で求められる高信頼性と高性能を両立している。
出所 編集部撮影
同製品は、2020年12月9日に販売を開始した、TOYOTA 新型MIRAI(ミライ)に採用された。
そのほか、デンソーブースでは、エネルギー循環社会に向けたエネルギー利用技術についても積極的に展示していた。
工場から排出されるCO2を回収して循環利用する実証施設「CO2循環プラント」注9(安城製作所の電動開発センター内)や、大気濃度レベルの希薄なCO2を、低エネルギーかつコンパクトに回収できる「大気CO2回収システム」などである。
▼ 注9
https://www.denso.com/jp/ja/news/newsroom/2021/20210407-01/