COVID-19のパンデミックとロシアのウクライナ侵攻の影響による、天然ガス・石炭等の高騰、それに伴う電力料金の高騰が進行する世界的なエネルギー危機の中、IEA(国際エネルギー機関)は、『再生可能エネルギー市場の最新情報 ―2022年5月 =2022年と2023年の見通し=』(全28ページ)注1を発表した。
同レポート(図)では、国際的にエネルギー市場が混乱する中にもかかわらず、再生可能エネルギー(以下、再エネ)による電力は、2022年にはさらに世界記録を更新すると予測している。
図 各再エネ発電の普及容量の推移(2019〜2021年)と同レポートの表紙
出所 Renewable Energy Market Update Outlook for 2022 and 2023の5ページ、
https://iea.blob.core.windows.net/assets/d6a7300d-7919-4136-b73a-3541c33f8bd7/RenewableEnergyMarketUpdate2022.pdf
https://www.iea.org/reports/renewable-energy-market-update-may-2022/renewable-electricity
このレポートの主なハイライトは次の通り。
- COVID-19のパンデミックによって生じている原材料などの記録的な高騰にもかかわらず、2021年の年間の再エネ発電容量は約295GWと、6%も増加(294.1GW÷276.6GW=1.06)した。
- 太陽光発電と風力発電のコストは、発電関連の製品価格や運賃などの上昇によって、2022年と2023年はパンデミック前のレベルよりも高いコストのまま推移すると予想されるが、天然ガスや石炭などの価格が大幅に上昇しているため、実際には再エネの競争力は向上している。
- 再生エネ発電容量は、2022年にはさらに8%以上も増加し、約320GW(≒294.1GW×1.08)に達すると予想されている。これは、ドイツの電力需要全体をカバーできる発電量、あるいは欧州連合の天然ガスからの総発電量に匹敵する量に相当する。
- 2022年と2023年における世界の再エネ発電は、(米国が下方修正を行っているにもかかわらず)引き続き増加が予測されているが、これは中国や欧州連合、ラテンアメリカなどの強力な上方修正が大きく貢献している。特に太陽光発電は、2023年に200GWに達する勢いである。
- 洋上風力発電は、2022年末に中国が欧州を上回り、世界最大の市場となる。