まとめ:GCスキーム標準と日本における課題
〔1〕日本でGCスキームを構築する場合
後編では、「24/7」を実施する際に準拠すべき標準となりうるEnergyTagが策定したGCスキーム標準の概要を解説した。見てきた通り、現在のGCスキームの案は、既存の再エネ属性証書のスキームとの連携が必要となっており、既存の再エネ属性証書から独立して構築されるものではない。
日本でGCスキームを構築するためには、民間企業独自で構築するのではなく、非化石価値証書やグリーン電力証書の既存の再エネ価値証書のスキームとの調整や統合を要することが予想される。
20ページの〔2〕に記載した通り、「既存の再エネ属性証書のスキームを進化させた構成」「既存の再エネ属性証書のスキームと連携し補完する構成」の2つのGCスキーム構成の可能性がある。
〔2〕コーポレートPPAの普及とEnergyTag標準
一方、コーポレートPPAの普及により、特定の電源(非FIT電源)からの供給と、特定の需要家の電力を紐づけるニーズは発生すると考える。
このとき、EnergyTag標準へ準拠することによって「24/7」を供給することが1つの選択肢となり得る。
技術的にはEnergyTag標準に準拠せずに、実時間で再エネ供給と電力消費をマッチングさせることは可能である。現に、特定の電源(群)からの供給と特定の需要家(群)の電力消費をマッチングさせるサービスを提供している小売電気事業者(旧一般電気事業者を含む)は、存在している。
これらの小売電気事業者は第三者確認機関による確認を受けているところもあるが、マッチングの方法論に関しては特に標準があるわけではない。
EnergyTag標準のような登録簿方式であるとは限らないし、既存の非化石価値証書やグリーン電力証書のスキームとは独立しているようである。
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今後、再エネ調達のデファクト標準として、EnergyTag標準が広く世界に普及するかどうかは、現時点では予想しにくい。前編(6月号)では、Googleやマイクロソフト、米国連邦政府など「24/7」への積極的な取り組みを見せている組織を紹介したが、これらの大組織が他にどのような影響を与えるか、どれくらいの他組織がこれに賛同し追従するかを追っていく必要があるだろう。
「RE100」のように、サプライチェーンや取引先から、その標準やガイドラインへの準拠を求められる可能性や、EnergyTag標準に準拠することの価値がどうなるかを随時見極めながら、「24/7」(または同等のサービス)を提供する各小売電気事業者やコーポレートPPAに関わる事業者は、サービス開発を進めるのがよいのではないだろうか。
(終わり)
筆者Profile
大串 康彦(おおぐし やすひこ)
米国LO3 Energy Inc. 事業開発ディレクター(日本担当)、カウラ株式会社 アドバイザー
1992年荏原製作所入社、環境プラントや燃料電池発電システムの開発を担当。2006年〜2010年までカナダの電力会社BC Hydro社に在籍し、スマートグリッドの事業企画などを担当。その後、日本の外資系企業で燃料電池・系統用蓄電システム等エネルギー技術の事業開発に従事。yogushi@lo3energy.com