POWERGsのシステム構成と次世代スマートメーター
図2に、POWERGsのシステム構成を示す。詳細は割愛するが、図2の左側はPOWERGs GWの通信環境を、右側はPOWERGsマネージドクラウドのサービス環境を示している。
ここで、図2の下段に示している「次世代スマートメーター」の通信環境に注目したい。現行のスマートメーターは、2014年度から本格導入が開始され10年後の2024年度中に導入を完了する予定だ。現行の「低圧スマートメーター」(100V/200V)のBルート(スマートメーターとPOWERGs GW間の通信ルート)の通信規格は、Wi-SUN(無線)方式とPLC(電力線通信)方式、「高圧スマートメーター」(6,600V)のBルートの通信規格はEthernet(有線)方式である。
しかし、スマートメーターの検定有効期間が 10年間であることに加えて、近年ではカーボンニュートラル(脱炭素)時代にふさわしい新仕様の次世代スマートメーターが求められている。この仕様が確定し2025年度から次世代スマートメーターが投入されると、POWERGs脱炭素パックはアップグレードすることで利用可能となる。
この次世代スマートメーターのBルートでは、次の2点が注目されている。
- 低圧(100V/200V)の場合は、従来はWi-SUN(無線)方式とPLC(電力線通信)方式であったが、低速などの理由で普及しなかったPLC方式を止め、原稿のWi-SUN(無線)方式とWi-Fi2.4GHz(無線)方式という2つの通信規格となった。
- 高圧(6,600V)および特高(20,000V以上)の場合は、現行のEthernet(有線)方式に新たにWi-SUN(無線)方式が追加され、2つの通信が可能となった。
図2 POWERGsのシステム構成
出所 ACCESS資料「脱炭素×デジタル POWERGs」をもとに一部修正して作成
期待高まる自治体向け防災への導入:住民に災害情報をどう伝えるか
〔1〕2050年までにCO2排出実質ゼロ表明自治体は991へ
現在、一般家庭・事務所とともに、「POWERGs脱炭素デジタルパック」に大きな期待を寄せているのは、全国の自治体である。すでに「2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ」を表明した自治体は、東京都、京都市、横浜市をはじめとする991自治体(46都道府県、558市、22特別区、317町、48村。2023年9月29日時点)となり、表明自治体人口は実に約1億2,511万人に達し、その人口カバー率99%以上にものぼっている注8。
この背景には、地球温暖化時代が終わり、地球沸騰化時代の到来に伴う異常気象によって、猛暑が続き、さらに台風や線状降水帯などの自然災害によって河川の氾濫、停電が頻繁に起こるようになってきたことが挙げられている。このため、自治体の防災担当者には、災害時に住民対してどのように災害情報を伝えるかという「災害時のコンテンツ」配信への関心が高まっている。
〔2〕住民に災害情報をテレビ画面で周知
インターネット時代にスマートフォンが急速に普及しているとはいえ、テレビは、依然として家庭の中心的な家電機器である。そこで、図3の上部に示すように、防災コンテンツサーバ(自治体・地域ケーブル事業者が設置)に対して、イエナカデータ連携基盤注9を経由して、ECHONET Lite Web API注10を使ってPOWERGsマネージドクラウドにつないでおく。すると自治体や電力会社から災害や停電の通知が発せられると、テレビに「この地域の〇〇で災害が発生しています」「停電が発生しそうですので、家電機器の状態を確認し、再エネ電気をアクティブにする準備をしましょう(例:EVの電池を家庭に送るようにしましょう)」というようなメッセージを表示する仕組みが検討されており、ACCESSではその実証実験を行い同実証システムを公開した注11。
現在の家庭向けテレビ(本体)のリモコンのdボタンを押して表示される画面構成の多くは、ACCESSが開発したブラウザで実現されている。したがって、このような仕組みを導入できると、災害情報の周知をより迅速に実現できるようになる。
また、現状では、災害時における再エネ電気への自動切り換えは、まだきちんとできていない。そのため、各分電盤機器メーカーは、例えば家庭の分電盤において、災害時に再エネ電気を供給できるような自動切り替えスイッチを開発している。このスイッチによって、災害の通知がきたらテレビに表示されると同時に、電源も自動的に再エネモードに切り替わるようになるようになる。今後の動向に期待できる。
図3 自治体向け防災とイエナカデータ連携基盤
出所 ACCESS資料「脱炭素×デジタル POWERGs」をもとに一部修正して作成
注8:環境省「2050年 二酸化炭素排出実質ゼロ表明 自治体」(2023年6月30日時点)
注9:イエナカデータ連携基盤:家の中に(イエナカ)にネットワーク家電をはじめ、多くのセンサーやデジタル機器が設置されつつあり、同時に“イエナカ”のデータが蓄積されている。今後、イエナカデータが数値化され、宅内機器はその情報収集端末装置として発展していくことが予想される。JEITA(電子情報技術産業協会)では、スマートライフ産業の発展に向けて、経済産業省と合同で「スマートライフ研究会」を発足し、データ連携基盤の整備が検討されている。
https://www.jeita.or.jp/japanese/pickup/category/2021/vol38-04.html
注10:ECHONET Lite Web API:POWERGsマネージドクラウドとイエナカデータ連携基盤をECHONET Liteでつなぐインタフェース。
注11:https://powergs.access-company.com/news/ienaga/