NTTドコモのLTE SIMを内蔵
図1に、「POWERGs脱炭素デジタルパック」の構成例を示す。
POWERGs GWは、図1に示す、「1.住宅」(左)や「2.事務所」(右)に導入・設置されるハードウェア(ゲートウェイ。相互接続装置)である。このゲートウェイをクラウドから管理できるように、POWERGsマネージドクラウド(図1右上)が用意されている。
POWERGs GWとPOWERGsマネージドクラウドは、NTTドコモのLTE回線で接続されていて、POWERGs GW中にはLTE SIM(LTE通信を行うために通信会社との契約情報が書き込まれたカード)をもつルータが内蔵されており、これによってNTTドコモの「ドコモIoTマネージドサービス」注6(図1上部2カ所)が提供されている。
ACCESSは、NTTドコモがLTE SIMをセットしたハードウェア(POWERGs GW)をNTTドコモから購入し、ACCESSが脱炭素化を目指すエネルギー関連の通信規格「ECHONET Lite」注7対応のソフトを開発して搭載し、ACCESSの商品として販売している。
図1 「POWERGs脱炭素デジタルパック」の構成例
出所 ACCESS資料「脱炭素×デジタル POWERGs」をもとに一部修正して作成
POWERGs GWの役割
ここでPOWERGs GWの役割を見てみよう。図1左は一般住宅に設置されたPOWERGs GWを示すが、これは一般的に「HEMS」(Home Energy Management System、家庭で使うエネルギーを節約するための管理システム)といわれる部分に相当する。
〔1〕住宅内でPOWERGs GWに接続される機器の例
図1左に示す住宅には、中核となるPOWERGs GWに、表1に示す協業/協力企業の支援を受け、次のような機器がECHONET Lite(通信プロトコル)で接続されている。
- エアコンや、ソーラーパネルと接続されたHybrid蓄電システム〔PCS(Power Conditioning System、パワコン)を経由して蓄電池とも接続されているシステム〕
- 外部の電力会社の配電線と接続された住宅内の低圧スマートメーター(100V/200V)
- 河村電器産業(表1)のスマート分電盤(電力会社からの電気を各部屋へ分配する機器)
- エコキュート(給湯器)
- 家庭用の定置型蓄電池(Hybrid蓄電システムの1つでもある)
- 椿本チエイン(表1)のV2X対応EV充放電器およびEV(電気自動車)
表1 POWERGsに関する協業/協力企業と提供ソリューション(順不同)
RA:Resource Aggregator、リソースアグリゲーター。需要家のエネルギーリソース(太陽光発電や蓄電池等)を制御する事業者
AC: Aggregation Coordinator、アグリゲーションコーディネータ。リソースアグリゲーター(RA)が制御した電力量を束ね、一般送配電事業者や小売電気事業者と直接力取引を行う事業者
V2X:Vehicle to Everything、車と車の通信、車と信号機等のインフラとの路車間通信、車と携帯をもつ歩行者との通信、車とネットワーク(携帯電話網)間の通信等で情報をやり取りして相互連携する技術
出所 ACCESSプレスリリース、「ACCESS、エネマネサービス向けワンストップソリューション「POWERGs 脱炭素デジタルパック」の提供を開始」2023年9月11日
〔2〕事務所内でPOWERGs GWに接続される機器の例
図1右に示す事務所に設置され、中核となるPOWERGs GWには、協業/協力企業の支援を受けて、次のような機器が、ECHONET Liteで接続されている。
- 河村電器産業の電力計測装置(eマルチ:電力量を自動計測&記憶し、計測データの収集などが可能な装置)。電力計測装置はECHONET Lite対応になっていないため、IPアダプタ(セカンドフェイズが開発)を経由して変換され、POWERGs GWからは電力計測装置がECHONET Liteに対応しているように見える。
- アイケイエス(表1)のEV充放電器(Modbus対応)も同様に、IPアダプタを経由することで、POWERGs GWからはEV充放電器がECONET Liteに対応しているように見える。
- 外部の電力会社の配電線と接続された、事務所内の高圧スマートメーター(6,600V)
このように、住宅も事務所もECHONET Liteをベースとした通信環境となっている。
住宅・事務所とつなぐクラウドの役割
次に、図1右上部に示すクラウドの役割を見てみよう。クラウドと住宅・事務所のPOWERGs GWは、先にも述べたが、モバイル通信回線LTE(ドコモIoTマネージドサービス)を介して接続されている。
図1右上部に示すクラウドのうち、「POWERGsマネージドクラウド」は、住宅・事務所に設置されたPOWERGs GWの管理や、LTE回線が正常に接続されているかどうかを管理している。
「Second Phase EMS」は、POWERGs GWに接続されたECHONET Lite対応機器から、各種のECHONET Liteデータを取得して保存することができる。具体的には、データを1分ごとに取得して時系でデータベースに保存する。また、必要に応じて30分単位の買電電力量積算値や売電電力量積算値、発電電力量積算値などのほか、EV充放電器の充電電力量積算値、放電電力量積算値などを計算して提供することも可能だ。さらに、各機器から取得したデータを利用して毎日の電力利用量をグラフで表示したり、Excelでデータを管理するCSV出力などアプリケーションサーバ機能を提供したりすることができる。
「SASSOR ENES」(サッソーの商品名。フルスペルはない)は、AIによって、需要家ごとの消費電力や発電量を予測・分析し、経済性が最大となるよう蓄電池やEVの自動制御を行うシステムである。これによって、例えば天候の状況や需要家の電力利用状況に応じて、ピークカットやピークシフトなどをAIで自動制御が可能となっている。
注6:ドコモIoTマネージドサービス:IoTソリューションを導入するためのゲートウェイ、モバイル回線、保守運用をトータルに提供するドコモのソリューション。
https://www.ntt.com/business/services/managed_services.html
注7:ECHONET Lite:エコーネットライト。異なるメーカーの家電機器を接続して、遠隔制御/監視するための通信規格(プロトコル)で、国際標準規格としても承認されている。エコーネットコンソーシアムが策定。
https://echonet.jp/about/features/