RFIDとは?
RFID(Radio Frequency Identification)とは、無線周波数を使用した個体識別という意味です。JISでは、「誘導電磁界又は電波によって, 非接触で半導体メモリのデータを読み出し,書き込みのための近距離通信を行うものの総称。」(JIS X 0500 データキャリア用語)と定義されています。
また、バーコードやRFIDなど自動認識システムの業界団体である、財団法人日本自動認識システム協会では、JISの定義に加えて「携帯容易な大きさであること」、「情報を電子回路に記憶すること」、「非接触通信により交信すること」という3つの条件を挙げています。
これらの定義からは具体的なイメージをつかみにくいところがありますが、今後紹介する具体的な製品や事例などをみることで、理解できるようになります。
なお、これらの定義に基づくと、JR東日本の「Suica」のような非接触ICカードもRFIDと考えられますが、混乱を防ぐために当面は除外し、いずれかの機会に非接触ICカードをまとめて取り上げて解説します。
RFIDシステムの基本構成
RFIDを利用するために必要なシステムの基本構成は、次のようになります。
【1】RFIDタグ
RFIDタグとは、識別したい個体に取り付けるタグ(短い識別子)で、RFIDタグの内部には、識別に必要なID(Identification、識別子)などの情報が書き込まれています。そして、これらの情報は電波によって外部へ伝えられます。
【2】RFIDリーダー/ライター
RFIDリーダー(Reader、読み込み器)は、RFIDタグから発信された電波を受信して、RFIDの内容を読み込み、コンピュータなどへ情報を渡すための処理を行います。また、RFIDライター(Writer、書き込み器)は、書き込み可能なRFIDタグに、情報を書き込むための処理も行います。
このほか、RFIDリーダー/ライターは、電源を内蔵しない(パッシブ型)RFIDタグの読み書きの際に、RFIDタグに対して電磁誘導や電波で電源を供給する役割も担います。なお、アンテナは、RFIDリーダー/ライターに内蔵される場合と外部に接続される場合があります。
【3】コントローラー
コントローラ(制御装置)は、RFIDリーダー/ライターから受け取った情報を利用して処理を行います。一般にコンピュータがこの役割を担いますが、RFIDリーダー/ライターに内蔵される例も増えています。
RFIDの使用周波数
前回紹介したようにISO/IECでは、135kHz以下、13.56MHz帯、2.45GHz帯、UHF帯(860~960MHz)、433MHz帯の5つがRFIDの周波数帯として規定されています。ただし、国ごとに周波数政策が異なっており、日本では、RFIDに割り当てられたUHF帯の帯域が非常に狭い(952~954MHz)ほか、433MHz帯がアマチュア無線専用に割り当てられているため、RFIDでは利用できません。
また、周波数の割り当てだけでなく、電波出力の規制なども国ごとに異なっています。しかし、日本の場合、例えば、UHF帯でRFIDが使えない状況から、帯域は狭くても使えるように改良されたほか、周波数割り当てに関して再検討が進んでいるため、今後、国内における使用周波数は変更される可能性は十分に考えられます。
ISO/IEC 18000シリーズにおいて、複数の周波数が標準化されている理由は、周波数によって電波の特性が異なるからです。一般に、周波数が低いほどRFID用のアンテナが長く(大きく)なり、周波数が高くなるほどアンテナが短く(小さく)なります(ページ下の説明を参照)。
一方、周波数が低ければ障害物の影響を受けにくくなりますが、周波数が高くなるほど、電波の直進性(まっすぐに進もうという性質)が高まるため、障害物の影響を受けやすくなります。これらをまとめると表1のようになります。
電波の物理的な特性による影響は避けられませんが、RFIDでよく利用される周波数の場合には、望ましくない影響を回避するための技術が進歩しています。例えば、日本では13.56MHz帯がよく利用されているため、この周波数帯については多くの技術の蓄積があり、少ない電力で通信距離をできるだけ長くする、近くにある金属の影響を受けにくくするなどといったことが実現されています。
ISO/IECで標準化されている周波数以外にも、すでに多くのRFIDシステムで利用されている周波数があります。その代表が300MHz帯付近であり、電池を内蔵したRFIDタグを使用して病院内で入院患者の居場所を把握したり、輸送船に積み込む特定の自動車の所在を把握したりといった位置情報の管理などに使用するRFIDシステムでは、事実上の標準になっています。