RFIDタグ
RFIDシステムのキーとなるデバイスがRFIDタグです。JISによる正式名称は「RFタグ」(RF:Radio Frequency、無線周波数)ですが、一般書やニュースなどでの使用例はあまり多くないようです。他には、RFIDタグ、ICタグ、無線ICタグ、電子タグなどの呼称が使用されています。なお、本連載では、最も的確に内容を表していると思われる「RFIDタグ」を使用します。
最も構造のシンプルなパッシブ型RFIDタグの場合は、ICチップ、アンテナ、パッケージから構成されます(図2)。
RFIDタグは、対応周波数、形態、内蔵電源の有無、書き込みの可否、付加機能などによって分類することができます。
【1】RFIDタグの形態
RFIDタグの形態としては、ラベル形、カード形、コイン形、円筒形など各種の形態があります。一般的には、用途やRFIDタグを取り付ける対象に応じて使用するRFIDタグの形態を選びます。代表的な用途や取り付ける対象は次の通りです。
(1) ラベル形:商品に貼付する
(2) カード形:人が携帯する
(3) コイン形:商品や部品に取り付ける
(4) 円筒形(ガラス封入):家畜の体内に挿入する
(5) その他:チケットや紙幣に漉き(すき)込む
【2】RFIDタグの内蔵電源の有無
(1) パッシブ型:電源を内蔵しない
(2) アクティブ型:電源を内蔵する
(3) セミアクティブ型:通常はパッシブ型として動作し、RFIDリーダー/ライターからの呼びかけがあったときだけ、内蔵電源を使用して電波を発信する。
パッシブ型の場合、RFIDタグの情報を読み取る際にリーダー/ライターから必要な電力を供給しますが、その電力を供給する方法の違いによって、さらに次の3種類に分類できます。
(i) 電磁誘導方式:RFIDリーダー/ライターのアンテナ付近に発生する誘導電磁界により電源を供給。135kHz以下と13.56MHz帯で使用。
(ii) 電磁結合方式:RFIDリーダー/ライターに送信用コイルと受信用コイルの両方を設けて、送信用コイルからの誘導電磁界によって電源を供給。広義の電磁誘導方式。
(iii) 電波方式:RFIDリーダー/ライターからの電波によって電源を供給。UHF帯と2.45GHz帯で使用。
【3】RFIDタグへの書き込みの可否
(1) リードオンリー:読み出しだけが可能
(2) リード/ライト:読み出しと書き込みが可能
(3) ライトワンス:読み出しと1回だけの書き込みが可能
【4】RFIDタグの付加機能
アクティブ型RFIDタグの場合、温度センサー、湿度センサーなどのセンサー機能を内蔵する場合があります。これにより、センサーネットと同等の機能を実現することも可能になります。
また、アクティブ型RFIDタグにLED(発光ダイオード)やブザーを内蔵させて、特定のRFIDタグにLED点灯やブザー鳴動の指示を与えることで、RFIDタグを取り付けた対象の所在を確認する用途などに使用できます。
アンテナの長さ
【参考】アンテナの長さは、送受信する電波の波長の半分にすると最も効率が良くなる。電波の波長は、次のように計算できる。
波長=光速÷周波数
光速(=電波の速度)は約30万km/秒であるため、135kHzの電波の波長は
波長≒30万km/秒÷135kHz≒2222m となる。同じように、13.56MHzで約22m、952MHzで約31cm、2.45GHzで約12cmとなる。
コラム
UWBを使用したアクティブ型RFIDタグ「UWB Dice」(仮称)
2006年7月4日、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所(代表:東京大学 坂村健教授)と日立製作所中央研究所は、UWB(Ultra Wide Band、超広帯域無線)を使用する電源を内蔵した(アクティブ型)RFIDタグ「UWB Dice」(仮称)を共同開発したと発表しました。
UWB Diceは、4.1GHzを中心周波数として1.4GHzの帯域を使用します。インパルス型UWBとして標準化の進められているIEEE 802.15.4a規格を採用し、2 ns(ナノ秒)という短いパルスを30 nsの間隔で送信します。そして、5分に1回の間欠動作を行った場合、約9年に渡って内蔵の電池を交換・充電することなく使用できます。
UWB Diceの本体は1cm角の立方体で、UWBを使用する通信機としては世界最小のサイズを実現しています(写真)。温度センサーを内蔵しているほか、各種センサーを接続できます。
用途としては、誤差30cmの高精度測位機能を利用して、UWB Diceを取り付けたモノや人の位置情報を取得したり、または温度管理の必要なモノに取り付け、内蔵の温度センサーを利用して温度管理を行うなどが考えられます。
※UWBについては本サイトの連載記事「活発化する電波/周波数の割り当て」の第1回もご参照ください。