ウルトラ3Gとインターネットの関係
—このへんは、そのウルトラ3Gの中には入っている概念なのですか?
冲中 現在の時点のウルトラ3Gでは、ウルトラ3Gとインターネットは、別のネットワークという位置づけです。すなわち、ウルトラ3Gでは、インターネットもすべて包含して取り込むぞといっているわけではなくて、インターネットとは相互接続する手段はあるわけです。
ただ、今私たちが提供している、テルコ・グレード(通信事業者として提供するレベル)のサービスをやるのであれば、これはウルトラ3G、あるいはNGNでやりましょうということです。そのために何が必要かということを、今一生懸命やっているわけです。
その結果として、このウルトラ3Gの機能の一部を使えば、インターネットを利用したい人が、使えるようになるかもしれない。一方、インターネットそのものが、どんどん進化・発展し、どんどん機能を強化していって、ウルトラ3Gの一部の機能をインターネットがもつようになるかもしれません。これは未だ、お互いに調整しあいながら進めている話ではありません。
—江﨑先生、両者がどこか、うまく折り合いをつける時期というのはくるのですか?それとも自然の流れになるのでしょうか?
江﨑 折り合いをつけるというのは、必要ありませんね。むしろ、NGNがあまり先に仕様を作ってしまうと動きが取れなくなってしまうところはあります。NGNがIMS(MMD)からスタートするということは、非常にいいことだと思います。
IMSに使用されているSIPなどは、もうすでに、実際に動いているネットワークのプロトコル・スタックですしね。したがって、どの機能がたりなくて、どの機能が不要かというのは、これからの運用の中でわかっていくことだと思います。
冲中 今、IMSとかNGNとかいっていますけれども、これ実は、最初にIMSの「バージョン1」を作った世界は、固定系ではなく移動系の世界なのですよ。IPベースでモビリティを確保しながら情報転送をし、接続制御もサービス制御もIPで実現することを目指したのです。
そこまで出来たのなら、そこに固定系で必要なサービス機能を加えれば、固定系に使えるのではないか、ということで始まったのがこの固定系のNGNで、ETSI(エッツィー)のTISPAN(タイスパン)なのです(欄外の用語解説を参照)。
ですから、TISPANの機能を取り込んで、今のIMSやMMDをバージョン2、バージョン3と上げていけば、機能も増えて、良くなっていくのです。
江﨑 そうなってきますね。そうすると逆に、要らない機能をどんどん捨てたくなってくる。昔のATM(非同期通信モード)を思い出しますね。
ATMについて最初の頃から標準化に関わった経験からすると、多くのメンバーがこういう機能がほしいといって追加されるので、標準化が進む段階では、仕様がてんこ盛りになるのです。
ところが、運用していくと、不要な機能が見えてくるようになる。そうすると運用サイドからミニマム・セットが作り上げられて、それ以上の機能はいらないということになる。それからさらに運用していくと、逆に、捨ててしまった機能が欲しくなってくるのですね。
冲中 最近、例えば営業をやっている方々から、「IMSって何?」って聞かれます。そこで、「あなたは、10年以上前からある電話網におけるIN(インテリジェント・ネットワーク)のことを知っていますか?」と聞き返します。簡単に言えば、「IMSは、INのIP版です。」と答えるのですよ。
江﨑 ほぼ正しいですね。