地上波DMDの海外進出動向
地上波DMBの海外進出状況について紹介します。まず、地上波DMBを採択する可能性が高い国は、既にDABを選択している40ヵ国です。40ヵ国と多い理由は、地上波DMBが、そもそも欧州のDAB方式を改良して生まれた技術であるからです。しかし、
現在DABを採択している国のなかで、イギリスを除いてほとんどの国でサービスが活性化されていないのが現状です。
このような状況を解決するために、DABを採択した国では最近、韓国の地上波DMB導入を真剣に検討しています。イギリス、フランス、ドイツ、オランダなど欧州の主要国、中国、マレーシアなどアジア諸国、アメリカ、メキシコ、ブラジル、ペルーなど中南米諸国など10ヵ国から韓国の地上波 DMBのデモ、またはカンファレンス開催を要請され、いままで20回以上のデモが行われました。
その結果、ドイツ、イギリス、メキシコ、中国では、次に示すように、今年から地上波DMBの実験プロジェクトが始まることになりました。次に、各国で推進している主な地上波DMBプロジェクトを紹介します。
まず、ドイツの「MI FRIENDS PROJECT」を紹介します(図1)。MI FRIENDSとは、Mobile Interactive Favorite TV、Radio、Information、 Entertainment、New Digital Serviceの略語です。これは、ドイツのバイエルン州放送規制機関(BLM)が作った地上波DMBプロジェクトです。
すなわち、移動端末における双方向テレビとラジオによって、情報とエンターテインメントが提供される新しいデジタル放送サービスを、どこでも友達のように利用できるというプロジェクトです。
このプロジェクトは、2005年11月には欧州の9カ国75社が共同で推進するCELTIC EUREKAの公式プロジェクトに選定されました。同プロジェクトは、2006年 1月に始まり、2年間で4つの地域で実施される予定です(図2)。
1つ目が、ドイツの小都市、レゲンスブルグでのプロジェクトで、 2006年 1月から実験放送を開始しました。2つ目は、ミュンヘンでのプロジェクトで、6月から始まったFIFA ワールドカップの開催期間中に実験放送を実施しました。
写真 欧州におけるMI FRIENDS PROJECTのスタート
3つ目は、ドイツ、スイス、オーストリアの接近地域である Bregenzでのプロジェクトで、4つ目は、北部イタリアの Tyrol (チロル)地域でのプロジェクトです。この MI FRIENDS PROJECTの推進により、ドイツ、イタリア、オーストリア、スイスなどで地上波DMBの進出が見込まれています。
欧州では、MI FRIENDS PROJECTとは別に、ドイツ、イギリス、フランスで地上波DMB プロジェクトが推進されています。
ドイツでは、携帯電話事業者であるデビテル(Debitel)が、5月からTシステムズ(T-Systems)のLバンド(1,452~1,492MHz帯)を用いて、ベルリン、ミュンヘンなどの5つの都市で地上波DMB実験サービスを開始しています。また、6月からはワールドカップ試合を開催している12都市で本放送を開始しました。この本放送はCAS(Conditional Access System、限定受信方式)を用いた有料放送(ビデオチャンネル4、ラジオ1)で、双方向サービスを実現しています。
イギリスでは 今年(2006年)6月からイギリスと韓国の放送事業者、メーカーなどが共同で、韓国の地上波DMBとイギリスのBT Lifetimeの拡張型パケットIP(Enhanced Packet IP)基盤の技術を比較検証を開始しました。
フランスでは 、2005年10月から半年間、フランス第1の放送局であるTF1、携帯電話事業者であるブイグテレコム(Bouygues Telecom)と韓国のサムスン電子、ポステルなどが参加する地上波DMB実験放送を実施中です。
中国の北京人民ラジオ放送局の子会社であるJolon(Beijing Jolon Digital Media Broadcasting)は、2006年1月から北京で地上波DMBの実験放送を開始し、5月からは 2つのチャンネルで本放送を開始しました。12月からは、地下街に中継機を置き始め, チャンネルの数を4つのテレビ・チャンネルと、12個のオーディオ・チャンネルに拡大する予定です。また、今年中には広東と上海で地上波DMBの本放送を開始する見込みです。