韓国における衛星DMBの政策
【1】衛星DMBの標準化政策
韓国情報通信部は、2002年から有識者などで『衛星DMB 標準化委員会』を構成・運営し、2003年4月、同委員会からの推薦に基づいて衛星DMBの標準としてDigital System E方式を採択しました。また、2003年12月には技術基準を決め、2004年9月には送受信整合標準を決定しました。
ここで、Digital System E方式とは日本の東芝が主な特許を保有している ITU-Rの標準方式です。特に 人工衛星の運用において最も重要な電力効率の面で優れているといわれています。
【2】衛星DMBの周波数政策
また、情報通信部は、2001年9月、衛星DMBサービスに必要な衛星網の軌道を確保するために、衛星周波数および軌道登録をITUに申し込みました。また、2004年には中国、日本などの隣接国との調整を完了して衛星網を確保しました。
【3】衛星DMBの事業許可政策
一方、情報通信部は、2004年7月に、SKテレコムを衛星DMBの衛星網賃貸事業者として選定しました。当初から衛星DMBを推進していたSKテレコムは、放送法上で直接、衛星DMB事業に進出することができないため、衛星DMB事業主体としてTUメディアを設立しました。2004年 3月に、日本の MBCO(Mobile Broadcasting Corporation、モバイル放送株式会社)と共同で衛星を打ち上げました。
放送委員会は、衛星DMB事業者としてTUメディアを推薦し、情報通信部はこれを受け、12月30日、TUメディアに衛星DMB放送局の許可を出しました。このような放送局許可メカニズムは、日本とは違うところです。
韓国で70万人を越えた衛星DMBの普及動向
TUメディアは、2005年1月から 4ヵ月間の衛星DMB放送の実験サービスを経て、2005年5月から 加入費20,000ウォン(約2,000円)、月額13,000ウォン(約1,300円)で商用サービスを開始しました。現在、12個のビデオ・チャンネル、26個のオーディオ・チャンネル を提供しており、2006年中にはデータ・チャンネルも提供する予定です。
最初から移動通信と結合された端末を供給して需要を喚起し、今年3月に開催されたWBC(World Baseball Classic)では、衛星DMBだけが放送したこともあって、その後、マーケットの需要が高まっています。また、「地上波DMB」と「衛星DMB」の両方を視聴できるデュアル・モード端末も開発されているため、ユーザーの選択肢も広がっています。2006年7月現在の加入者は、70万人を超えて、地上波DMBとは差別化された、新たなプレミアム・モバイル放送市場を形成しつつあります。
図4 韓国の衛星DMBの端末の例
国際的な評価を受ける韓国のDMB
韓国のDMBは当初、通信と放送の融合の観点でさまざまな問題に直面しました。しかし、政府は民間企業との深い議論を重ねて複雑な利害関係を調整し、問題を解決してきました。今は、無料放送の地上波DMBと、有料放送の衛星DMBがお互いに競争しながら相互補完的に普及し、ユーザーの立場で利便性が向上し、選択肢が増える理想的なモデルに近づいています。
また、新しい技術方式を提案し、世界のテスト・ベットとしての役割も果たしています。このように韓国のDMBは、政策の面からも、技術の面からも、通信と放送の融合分野で世界的な成功事例として評価されつつあります。