[標準化動向]

802.1/802.3の標準化動向(5):次世代イーサネットは100Gbpsに決定! 2009年11月の標準化を目指す

2006/12/27
(水)
SmartGridニューズレター編集部

HSSGの目標仕様(オブジェクティブ)を採択

今回のHSSG会合の最終日に、目標仕様(オブジェクティブ)に関する審議が行われ、下記の目標仕様が採択された。

【1】従来のイーサネットとの互換性

下記3点の目標仕様について満場一致で採択された。次世代高速イーサネットにおいても、フレーム・フォーマットなど、イーサネットの基本的な仕様は維持される。

・全二重通信(双方向同時通信)のみをサポートする
(CSMA/CD 〔※2〕による半二重通信はサポートしない)
・フレーム・フォーマットの維持
・最小・最大フレーム長の維持

【2】データ速度は100Gbpsに決定

これまで40ギガ、80ギガ、100ギガなど、複数のデータ速度が検討されてきたが、100Gbpsのデータ速度が、賛成67名、反対9名の大多数の賛成により採択された。SONET(※3)の伝送速度は、150メガ、600メガ、2.4ギガ、10ギガ(9.8ギガ)、40ギガと4倍の比率で拡張されてきた。

次世代高速化イーサネットにおいては、SONETと伝送速度を共通化して、SONET用途との光コンポーネント共通化を図るべきなどの意見があったが、HSSG全体の意思としては、SONETとの共通性よりも、イーサネットの「データ速度10倍化」という市場の期待に応える道を選んだ。

用語解説

※2 CSMA/CD:Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection、衝突検知機能付きキャリア感知多重アクセス
イー サネットの中核技術として考案された媒体アクセス制御プロトコル。送信信号の衝突を感知した場合に、各端末にデータを再送信するように通知する。全二重通 信(双方向同時通信)ができないことや、長距離化が難しいこともあり、10ギガイーサネットではサポートされなくなった。
※3 SONET:Synchronous Optical Network、同期式光通信網
SONETは、同期式光通信網の意味で、米国のBellcore(現Telcordia Technologies)が提唱した光インタフェースの通信速度標準の仕様である。これとほぼ同義語のSDH(Synchronous Digital Hierarchy)は、同期デジタル・ハイアラーキの意味で、ITU-Tにおいて標準化され、国際的に統一された速度標準である。

【3】シングルモード光ファイバ10kmと
マルチモード光ファイバ100mのサポート

シングルモード光ファイバで10kmの伝送距離をサポートすることが満場一致で採択された。10ギガイーサネットにおいて主流の10GBASE-LRと同様に、まずはシングルモード光ファイバで10kmのサポートが必須であるとの認識で一致した。

これと併せて、OM3マルチモード光ファイバで100mのサポートについての審議が行われ、賛成61、反対3の賛成多数により採択された。OM3(Optical Multimode 3)マルチモード光ファイバとは、短波長(850nm)の伝送距離を改善させたコア径50μmの新しいマルチモード光ファイバであり、10ギガイーサネットの10GBASE-SR向けなどに普及してきている。この高性能ファイバを使用して、データセンタ内の短距離接続を実現しようというものである。

上記の目標仕様の採択によって、標準化審議を推進する上で重要なポイントとなる「データ速度」、「伝送媒体および距離」の目標仕様が固まった。今後、新しい目標仕様が追加される可能性はあるものの、当初想定していた2007年3月よりもかなり早い段階で主な目標仕様が決まったことになり、標準化に向けた議論が加速されることが期待される。
 

参考文献

(1) “IEEE802.3 Higher Speed Study Group Agenda and General Information”, http://www.ieee802.org/3/hssg/public/nov06/agenda_01_1106.pdf , John D’Ambrosia , 2006/11/15
(2) “Short-Reach on Parallel MMF for Low-Cost Higher-Speed Ethernet”, http://www.ieee802.org/3/hssg/public/nov06/jewell_01_1106.pdf , Jack Jewell, 2006/11/15
(3) “Economic Feasibility of 20GBaud based 100Gb Transceivers”, http://www.ieee802.org/3/hssg/public/nov06/cole_01_1106.pdf , Chris Cole, 2006/11/15
(4) “DQPSK Format for Serial PHY”, http://www.ieee802.org/3/hssg/public/nov06/duelk_01_1106.pdf , Marcus Duelk, 2006/11/15

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