IEEE 802.15.3c 第10回会合
IEEE 802.15ワーキング・グループの第45回会合は、2006年11月12日~17日、米国ダラスで開催された。この中で、TG3cの第10回会合では、14日に4スロット、15日に3スロット、16日に4スロットの計11スロット、22時間の討議が行われた(1スロットは2時間の会議)。
今回の会合では、各スロットに前回を上回る60~80名(うち投票資格者は30名余り)の出席があり、当初予定していた会場では席が足りず、立ち見が多数出たため、2スロット目から会場を大部屋に移した。
チャネル・モデルや利用モデルの各種議論で、十数回の採決が行われた。また、投票資格のない参加者を含めたストロー・ポール(人気投票)による各種パラメータの選定などが実施され、前回にも増して活発な議論が交わされた。
今回の寄与文書30件のうち、12件は情報通信機構(NICT)、またはNICTと連名の寄稿であった。
今回の審議内容
【1】チャネル・モデル編成、標準アンテナの選定
(1) 前回不足していたNLOS(Non Line of Site、見通し外通信)の実測データ・モデルなどがNICTから提出され発表された。これにより、オフィス、住宅、図書館、デスクトップの屋内4環境と、LOS(Line of Site、見通し内通信)とNLOSの条件を組み合わせた、計8個の60GHz帯屋内チャネル・モデルに集約され、これをもってモデル化完了とすることが、採決により承認された(06/483r3)。
なお、会議室および廊下環境は、データが揃わず削除された。また、NLOSの一部モデルについては「LOSモデルからLOSの直接波成分を除去した」擬似モデルが引き続き採用されている。また、マサチューセッツ大学から提案された円偏波モデル(06/471r0)の採用は否決された。
(2) チャネルの数式モデルをコード化して、方式シミュレーション用にファイルで提供することになっており、準備中のMATLAB(MATrix LABoratory、数値解析ソフト)コード・プログラムについて説明があった(06/459r2)。この中でいくつかの問題点の指摘があり、このプログラムの検証作業をNICTとNICTA(豪)、インテルなどが協力して12月半ばまでに完了することが合意された。
(3) 前回会合で募集することになった、方式比較検証シミュレーションに使用する標準受信アンテナ・モデルについて、NICT、NTT、インテルなどから4件の応募があった。(06/427r4, 06/474r0, 06/455r0, 06/303r0)。
NICTほか4社の連名で、単純ガウシャンパターンのメインローブのみのアンテナ・モデル(06/427r4)と、NTTほか4社連名でこれを補完する平均化サイドローブ・パターンモデル(06/474r0)が提案され、後述の技術要件の討議の中で採用が決定された。
【2】利用モデルの絞り込み議論
前回会合で集約された5つの利用モデルについて、シミュレーション上の課題に関する5件の発表があった(802.15.3c(無線PAN)の標準化動向 (4)を参照 )。
UM5(Usage Model 5:利用モデル5、ダウンロード・キオスク)における、PDAの手振れによるジッター(ゆらぎ)の影響(06/440r2)、UM1,UM2における非圧縮ハイビジョン伝送のエラー率(06/444r0)、UM4(アドホック会議)におけるデバイス機器の配置(06/442r3、06/486r0)、15.3c用MACに関する考察(06/450r0)などである(802.15.3c(無線PAN)の標準化動向 (3)を参照 )。
利用モデルのシミュレーション実施に関しては、ポイント・ツー・ポイントモデルのUM1(非圧縮HDストリーミング)とUM5(ダウンロード・キオスク) の2つを必須対象とし、ポイント・ツー・マルチポイントモデルのUM2(複数非圧縮HDストリーミング)、UM3(オフィス・デスクトップ)、UM4(アドホック会議)は、オプション扱いとすることが投票で決定された(06/369r9)。