第1回 HSSG会合での2つの主要な審議事項
今回は、前述の決議を受けて開始された高速化イーサネット検討会(HSSG)の第1回会合(2006年9月20日~21日)となった。アメリカの半導体メーカー、システム・ベンダ、サービス・プロバイダを中心に、約90名の参加者があった。
HSSG議長には、前述のCFIでの提案を取りまとめたフォーステンネットワークス(Force10 Networks)のジョン・ダンブロージア(John D’Ambrosia)氏が満場一致で選出された。
フォーステンネットワークスは、10ギガスイッチの中堅メーカー(10ギガイーサのポート出荷数ベースで、シスコ・システムズ、ファウンドリ・ネットワークに次ぐ第3位、※2)であり、IPO(株式公開)前のベンチャ企業でありながら100ギガイーサ標準化にもっとも積極的なメーカーの一つである。
今回のHSSG第1回会合では、主に次の2点についての議論が行われた。
(1)高速化イーサネットの目指すべき市場
(2)高速化イーサネットに適用可能な技術・方式
※2 デルオロ(Dell’Oro)社統計データ (2006Q1)による
高速化イーサネットの市場
【1】アンケート結果の報告内容
ローレンス・バークレー国立研究所(LBNL:Lawrence Berkley National Laboratory)のマイク・ベネット(Mike Bennet)氏から、高速化イーサネットのニーズについて関連業界へのアンケート結果が報告された(参考文献1)。
ISP(Internet Service Provider、インターネット接続サービス提供事業者)や、IX (Internet Exchange、インターネット相互接続)、ケーブル・テレビ(CATV)などのサービス・プロバイダに加えて、米国内の国立研究所などから回答が寄せられた。
このアンケート結果によると、サービス・プロバイダにおいては、すでに10ギガを越える通信帯域が必要とされており、多くの事業会社において、10ギガイーサをLAG (Link Aggregation、※3)接続して10ギガ超の帯域を実現していることが分かった。
とくに、インターネットのサービス・プロバイダ網を相互接続するIX業界では「10ギガイーサを最大8リンクまで束ねたLAGを使用している」との回答があり、100ギガクラスの高速化イーサネットへのニーズが高いことが分かった。中には、「(このままでは)2010年までには10ギガイーサを64~128本束ねたLAGが必要になる」という事業者もいたとのことである。
高速化イーサネットに求められる伝送距離については、メトロ(都市域)網向けに40km以上の伝送距離が欲しいという要望がある一方、大半のニーズは、データ・センタやPOP(※4)内を接続する用途のため、300m以下の伝送距離でカバーできることが判明した。
用語解説
※3 LAG:Link Aggregation、リンク・アグリゲーション
複数の通信回線(リンク)を仮想的な1本のリンクとして扱う技術のこと。例えば、10Gbpsのリンクを8本束ねて、80Gbpsの仮想リンクとして使用すること。
※4 POP:Point of Presence
ユーザーが最初にISPに接続するアクセス・ポイント。
【2】適用分野では「データ・センタ」がトップ
この関連業界へのアンケートの他、HSSG参加者に対して、どのような分野への適用を検討しているかとの挙手投票が行われた。結果は、次の通りである(複数回答あり)。
- データ・センタ用途:46名
- メトロ用途:38名
- 企業・キャンパス用途:34名
- HPC(High Performance Computing):26名
- 筐体内(Backplane):10名
- 長距離用途:9名