NGNと放送・通信の融合、FMC、光化:すべてが同期しはじめた!
—全体的な流れを見ていますと、NGNが出てくる背景に、お話があった光ファイバ(FTTH)が急速に普及し大分盛り上がり、ぐっと立ち上がってきていて、既にユーザは700万加入を超えています。また、2011年にはアナログ放送をやめて完全にデジタル放送に移行していく、あるいは、固定通信系と移動通信系を統合するFMCが出てくるとか、モバイルでは第4世代が出てくるとか。NGNに同期させているわけではないと思いますが、放送も通信もモバイルも固定も、みんな待ってましたというような感じを受けるときがあるのですけど、先生、この辺どうみておられますか。
森川 これについて、ネガティブに言ってもよろしいでしょうか。端的にいいますと、これらは、全部ネガティブな動機から発想されたものだと思います。例えば、FMCは、固定のキャリアが現状の右肩下がりのビジネスを何とかしたいということから出てきている。放送との融合も、固定のキャリアがもうけるための発想から出てきた。結局、光ファイバ(FTTH)も、光でコンテンツを大量に配信できるから、ここでもうかる。
キャリアとしては、今のままじゃもうからないから、光化するとか、放送との融合を図るとか、FMCとかが出てきているのですね、そういうように見ますと、すべて同じ流れになっているのです。ですから、現在、これらが関連しあって、すべてがうまく同期して動きはじめているような感じがしています。このようなプレッシャーがないと進みませんから。
—そうすると、固定通信側から放送側に言い寄っている、また、固定通信側からモバイル側に言い寄っているということなのでしょうか
森川 そうですね。
—村上さん、いかがでしょうか
村上 現在、サービスとして、IPTVも含めたトリプル・プレイ・サービスなどが注目されています。トリプル・プレイとかFMCというのは、これは、日本だけの動きではなくて、グローバル(国際的)な動きですね。ネガティブな言い方をしますと、FMCはヨーロッパがすごく引っ張っています。なぜかというと、携帯の世界では、欧州がGSMという携帯電話の方式をつくって非常にうまくやってきています。
そのGSMのビジネス・モデルを携帯の世界だけではなくて、固定も含めて通信全体でやろうということで、それをFMCといっているのです。携帯電話(GSM)は通信のイメージを大幅に変えたんですね。しかも、国別のサービスではなくて、標準化を早く行い、新しいサービスをどんどん提供し、国境を越えてそれがどこでもつながるということをやったのです。これと同じことをNGNでもやっていこうとしているのです。そこのキーワードは、FMCということで、これは欧州が引っ張っているところです。
—米国はいかがでしょうか
村上 トリプル・プレイは、米国が引っ張っています。これを先ほどのようにネガティブなとらえ方をしますと、米国ではケーブル・テレビ(CATV)で、電話もインターネットもできるようになっているため、ケーブル・テレビが非常に強くなってきています。これと対抗するために、電話会社もテレビをやろうということで、トリプル・プレイ・サービスが盛り上がっているのです。このサービスは、ある意味ではバンドル・サービス(電話やインターネット接続との組み合わせサービス)というところからきているのです。
しかし、NGNが単に電話の置きかえではなくて、ニュー・ビジネスの創出だという話になってくると、欧州だけのFMCではなくて、世界的なNGNにおけるFMCだ、また、トリプル・プレイだというふうになってきていると思います。ですから、これは逆に言うと、そういうモチベーションは、欧州や米国から発したサービスを、すべてある意味では混ぜこぜ(これを「ブレンド」という)にして、新しいサービスとして提供できないかということで、これが今のNGNのドライビング・フォース(牽引力)の一つにもなっています。
先ほど申し上げたように、これらのサービスは、もともとはどちらもバンドル・サービスの発想からきているのです。バンドル・サービスにすると、キャリアの新しいビジネスになるとか、ユーザーの解約率が低くなるなどの効果があるのです。過激な競争環境がこの発想を生んだと言えます。しかし、ユーザー・サイドから見るとそれだけでは発展性はないですよね。最近、私たちはこれらをブレンデッド・サービス〔コーヒーのように何種類かのコーヒー豆(サービス)を混ぜたようなサービス〕といっています。
要するに、ネットワーク・コンバージェンスというのは、今までサービス別にネットワークがあったのですが、これをNGNでコンバージェンス(統合)することです。このNGNよって、従来のFMCとかトリプル・プレイというのは、バンドル・サービスからブレンデッド・サービスになっていくと思います。ブレンデッド・サービスというのは、境目のない混ぜ合わさった一つの新しいサービスというイメージです。
最近、標準化の仲間たちは、“コンバージェンス”というキーワードの次として“シナジー”という言葉を盛んに使います。技術的なコンバージェンスの検討を何のためにやるのか。それは、シナジーなんですね。このようにとらえますと、通信と放送の融合でも新しいサービスが生まれる可能性は大いにあるのです。