NGNのフィールド・トライアルと
インタフェースのオープン化
—昨年末(2006年末)に、待望のNTTによるNGNフィールド・トライアルが、世界に先駆けてスタートしましたね。NGNのフィールド・トライアルというのは、ニュー・ビジネスをつくっていくテストベッドでもあるのではないかと思いますが、先生はどう思っておられますか
森川 NGNの重要なところは、NGNのキャリアが全部サービスをクローズドにして提供するのではなくて、オープンにしてサード・パーティに参画してもらうというのが、NGNの一番重要なところと思います。ここは、今までのキャリアの考え方を変えなければいけない大きなポイントだと思います。それを探っていくのが、多分このフィールド・トライアルのねらいだろうと思っています、
ただ、現時点で、革新的なアプリケーションやサービスが出てくるかというと、必ずしもそうではないと思います。しかし、フィールド・トライアルの重要なところは、NGNというものがどういうもので、NGNを使うとこういうこともできる、こんなこともできるというようなことを、多くの人たちに知らせることが、NGNの発展に一番重要なことだと思います。
NTTのやっているNGNはよくわからんなんて言われてはいけません。NGNの可能性を、わかりやすく、きちんと多くの人々に教えてあげることが、NGNの花が開かせるかどうかが決まってくるように思います。
—村上さん、今先生から、キャリアの考え方を変えるというお話や、これからはサード・パーティなどと連携してビジネスを興していくというお話について、いかがでしょうか
村上 もちろんそのとおりですね。先ほど私は、連立方程式を解くと言って、1つ目は電話の置きかえ、2つ目はブロードバンド、3つ目は連携、という話をしましたが、多分、NTTは、世界の中でもいちばん3番目の連携のところに重きを置いています。今回のフィールド・トライアルというのは、連携のところを一番重視しそのアクションを起こしたということですね。具体的には、図1(NTT報道発表資料:2006年7月21日のインタフェースの図)のSNI(※1)の部分を、サービス提供者の皆さんにオープンにし、連携してやるということを発表したことが一番大きいことです。
フィールド・トライアルといったときに、2つ意義があって、1つ目は、今言った、新しいアプリケーションのための連携のトライアルです。このトライアルでは、サード・パーティや情報家電メーカーなども含めて一緒に「連携するトライアル」を行っていること自体が、世界的では新しい試みだと思います。
2つ目は、フィールド・トライアルというのは技術確認という面があります。先ほど、IPの技術を使ってコンバージェンス(統合)・ネットワークをつくると言いましたが、現在、NGNの標準化で決まっているのは、まだアーキテクチャだけなんです。しかも、ペーパーワークで決まっているだけなので、やっぱり実装確認(実際にプロトコルなどを機器に搭載してその動作を確認すること)というのはこれからなのです。したがって、実装して実際に動かしてみるというのは非常に重要で、これが逆に技術を発展させ、標準化にフィードバックされていきます。
NGNのリリース1というのは、NGNのフレームワーク(全体の枠組み)を中心に標準化しているので、次のリリースにこのフィールド・トライアルの経験を反映させることが重要だと思います。また重要なところは、私たちは、ほかの国と違って光をベースにしているので、ブロードバンドといっても「超ブロードバンド」の技術確認ですから、非常にハードルが高いわけです。
—すごいですね。日本いると光(FTTH)が身近すぎて、気がつきませんね
村上 NGNを、単に電話網の置きかえとするということだけを考えている人々よりも、技術的なハードルは高いので、そういう意味では先行していると思います。先行しているので、それを世界にフィードバックかけるということは、私たちの使命だと思います。
用語解説
※1 SNI:Application Server‐Network Interface、各種のアプリケーション・サーバとネットワーク(NGN)を接続するためのインタフェース。