[特集]

対談:NGNリリース1と技術的チャレンジを語る(2):世界の通信業界とNGN、そして日本の役割

2007/03/06
(火)
SmartGridニューズレター編集部

NGNは放送網になるのか。放送側の見方と通信側の見方

—NTTは、NGNを推進しながら、世界で一番とも言われている光ファイバ(FTTH)の普及を強力に推進していますよね。これによって、高品質な映像がどんどん流せる環境になってくるわけです。ということは、放送網になっていくわけですよね。これについて、先生、放送側の見方と通信側の見方があると思うんですがいかがでしょうか

森川 NTTは事業計画として、どんどん光ファイバを敷設し、品質の高いコンテンツをサービスしていきたいでしょうね。一方、放送側としては脅威を感じるでしょうね。放送サービスのようなことはやって欲しくないと思いますよ

—なぜでしょうか

森川 やっぱり放送については、既得権益というものがあり、これは国家的に保護されていますからね。つまり、放送のコンテンツをインターネット、あるいはNGNで流したときに、放送側の人たちがもうかるのかどうか、ということが重要ですが、多分、現在はまだ不安なのでしょうね。もうかるというように、放送側の人たちに教えてあげればすぐにでも、了解すると思います。しかし、通信側(NGN)に全部吸い取られてしまうのではないか、という不安があるので、そこが、現在の戦いになっているのです。

—村上さんのお考えは?

対談風景

村上 私は、放送のビジネスに詳しくありませんし、NTTを代表して発言する立場にありませんので、その辺をご理解いただいてお話いたします。先ほどお話したトリプル・プレイというのは、ケーブル・テレビ業界と通信業界の戦いの中で生まれてきたサービスなのです。もともとは、通信業界がいろいろなコンテンツを抱え込んで放送と対抗するということだったのですが、現在は、通信と放送が連携してサービスを提供するという話になってきています。

私どものスタンスからすると、放送業界というのは豊富なコンテンツ(番組)をもっているわけですが、もっているそのコンテンツの流し先が、一つ増えたというふうに思ってもらえればいいのかなという感じです。ですから、すでに、キャリアやプロバイダ(ISP)では、IPTVやVoDサービス、ストリーミング・サービスなどを、提供していますけれども、コンテンツ自体はいろいろなコンテンツ・ホルダー(コンテンツ所有者)と連携してやっています。

連携してやるということは、ある意味ではコンテンツをもっている人たちにとって、デストリビューション(コンテンツ流通)のパイプを1つ増やしているというように思っていただけると、今後もっとビジネスが広がっていくのではないかと思います。もちろん、話が単純ではないことは分かってますが。

—今のお話で、CATVというのがありましたね。米国ではかなり普及していますが、日本でも、CATVによって、放送も、インターネット接続も、電話サービスもみんなやっていますね。このようなサービスの形態は、NGNにおけるモデルの一つのような気がするのですが

森川 そのとおりです。それができないのは、技術の問題というよりも、制度の問題と思います。

村上 テレビ放送には、地上波によるテレビ放送やCATV、あるいは衛星テレビ放送、ペイ・パー・ビューの有料放送など、いろいろあります。ですから、このような放送のいろいろなビジネス・モデルとNGNが連携できるところはたくさんあると思うのです。具体的には、放送内容を再利用してDVDとして販売する(流通させる)と同じような考え方で、NGNを利用してVoDのような形で流通させるということは十分可能性があります。これは、パイの食い合いのように見えますけれども、そうではなくて、シナジー効果(相乗効果)といえるのではないかと思います。

森川 そのとき、一番ボトルネックになるのは著作権法ですね。著作権法を多くの人々が使いやすくなるような形できちんと整備してあげることによって、コンテンツの流通がもっと広まっていくと思います。それによって、いわゆるNGN上やインターネット上でのトラフィックがどんどん増えていくと思います。

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