NTTのトライアルは、なぜSNIを使用するのか
—なるほど。1つだけ確認させていただきたいのですが、NGNのアーキテクチャでいうと、リリース1では、アプリケーション・ネットワーク・インタフェース「ANI」になっていますが、NTTのフィールド・トライアルでは「SNI」となっていますね。なぜでしょうか
村上 それは非常に難しいところなのです。標準化の観点から述べさせていただきます。はっきり言って、NGNのANIというのは、まだ標準化ができていないのです。ANIという名前はついていますが、標準化としてはまだあいまいです。今回のトライアルでは、あいまいなものを出すわけにいかないのです。多分、アプリケーションに対する切り口はいろいろあるとは思うのですが、そのSNI(アプリケーション・サーバ・ネットワーク・インタフェース)というのは、私たちのようなネットワーク屋としては非常にわかりやすいところです。機器をつなぐ観点から規定しやすいということです。
要するに、レイヤの下のほうから上のほうまで全部含めて同時にインタフェースを規定しているので、サービス提供者のサーバ(例えばVoDサーバ)とNGNをつなげるという具体的な作業レベルで非常にわかりやすいということです。まだ定義があいまいなものですと、実際につなごうとしても、どうつないでいいのかわからないわけです。そういう意味で、標準化の進捗状況および世の中の実装状況を鑑みると、トライアルでのオープン・インタフェースがSNIというのは、現実的だと私は思います。
—先生、この辺のSNIについてはいかがですか
森川 SNIというインタフェースをオープンにしたというのは、大変重要なところなのですが、私はNTTの外部の立場から言うと、このインタフェースについてはいろいろなレベルでオープンにして出すといいかなと思います。これはもちろんNTTは嫌がるでしょうけど、MVNO(※2)のように提供する機能に複数のレベルがあってもいいのではないか。
例えば、課金や位置情報管理などといったNGNが備える機能のうち,課金機能だけ提供してくださいとか、位置情報だけくださいなどというサービス・プロバイダがいてもいいような感じがします。いろいろなレベルでNGNのインタフェースが公開されてもいいのかな、と思います。
村上 先ほど申し上げましたように、標準化とかもまだできていないですし、世の中の実装状況を考えると、現時点ではあそこが一番現実的だと思っています。現在、ちょうどこのレイヤの標準化議論が始まったところですので、フィールド・トライアルでのSNIの経験も標準化に反映して行きたいと思います。さらに、これからいろいろ技術的な検討を行い、どういう切り口で、どういうインタフェースを出せるか、その可能性を調べることになると思います。
用語解説
※2 MVNO:Mobile Virtual Network Operator 、仮想移動通信サービス事業者。移動通信サービスを提供している移動通信事業者から、無線通信設備を借り受けて携帯電話などのサービスを提供する事業者の こと。MVNOは、移動通信事業者から借り受ける機能レベルによって、種々の形態が考えられる。