[スペシャルインタビュー]

NGNリリース2への展望を聞く(4):日本とって重要となるアジア連合「CJK会合」

2007/11/13
(火)
SmartGridニューズレター編集部

2006年7月のNGNリリース1に続いて、2008年のNGNリリース2に向けた標準化か活発化しています。そこで、日本におけるNGNやIPTV、IMSなど次世代技術の標準化作業を推進している、TTC(社団法人情報通信技術委員会)の理事長ある井上友二氏に、注目される「標準化の重要性」と「NGNリリース2への展望」をお聞きしました。井上氏は、NTTで通信網の構成技術や伝送技術の研究に携わる一方、ITU-Tの標準化活動にも積極的に貢献し、その後、NTT取締役第三部門長としてNTTの研究部門の責任者としても活躍されました。
今回(第4回:最終回)は、
第1回:標準化に力を入れる中国と欧州勢
=浮上するIPR(知的財産権)の獲得=
第2回:ユーザー側へのサービスを重視したITUへ
=NGNが必要となった3つの理由=
第3回:本格的に動き出したNGNリリース2の標準化
=目玉となるIPTVは3方式を検討へ=
に続いて、NGNリリース2の標準化への具体的なロードマップと、日本とって重要となるアジア連合「CJK(中国・日本・韓国)会合」などについて、お話をお聞きしました(文中敬称略)。
聞き手:インプレスR&D 標準技術編集部

NGNリリース2への展望を聞く!

≪1≫各国で温度差が大きいIPTVへの取り組み

■前回お話いただいたNGNリリース2の目玉となるIPTV(IP放送)は、放送と通信の融合でもあるので、各国の行政的な規制に関係してきますね。

井上 そうです。IPTVの場合は、その規制(レギュレーション)が各国で結構大きな課題になっています。通信と放送の融合というのは、放送のビジネス・モデルというのは、世界のどこ国も日本と非常に似通っていますから、どの国も通信ほどはオープンな政策をとれない事情があるのです。また、放送というのは、放送内容(番組)によって国家の動向が左右されかねない側面をもっているところがありますので、国際的に見ても国営放送が多い状況にもなっています。

■なるほど。

井上 要するに、放送を野放しにしてしまうと、国家統制を強めている国は困ってしまうわけですね。日本のように、比較的、言論が自由な国は少ないですからね。ITUに加盟している191カ国あるうちの、多分、言論の自由がある国は、そう多くはありません。多くの国は国営放送だけの状況なのです。

■たしかに国営放送が多いですね。

井上 放送は通信と違って、ブロードキャスト(1対不特定多数相手の配信)ですから、放送した瞬間にほぼ全国民に一斉に同じ番組内容が伝わってしまうため、修正は不可能という、どうしようもない側面をもっているのです。これに対して、1対1の通信を基本とする電話は、よくスパイ映画などでよくでてきますように、盗聴できるところがありますから、問題がありそうな場合はそれなりに対応できるのです。

また、テレビ放送はテレビ受像機という端末が絡んでいます。ですから、日本や韓国のようにテレビ受像機をたくさん製造している国では、IPTVの端末(受像機)に関して、家電メーカーは強い関心を抱いています。しかし、欧州ではもともと家電メーカーが少なくフィリップスくらいしかありませんから、家電に弱いところがあります。このため、IPTVに関して、ネットワークには関心はあるけれども、前回(第3回)お話したIPTV端末とコンテンツ・サーバ間のプロトコルなどには関心は少ないようです。

■日本は端末もサーバも、両方とも関心が高いですね。

井上 要するに、コンテンツ(映像)をIP化して配信するIPTVの場合、リアルタイムに再送信する以外は、コンテンツはサーバに入っています。そのサーバにIPTV端末がどのようにコンテンツを取りに行くかというプロトコルが、前回お話したIPSPというプロトコルなのです。このプロトコルをどう標準化するかということで、マイクロソフト方式や、日本のIPSP方式などの多数の方式が提案され、現在、百花乱立している状態なわけです。

■各国で温度差はかなりあるのでしょうね。

井上 そうです。欧州は家電メーカーやサーバ・メーカーも少ないため、IPSPのようなプロトコルについてはあんまり関心を持ちません。米国の場合には、もともとネットワークにはあまり興味がなく、端末とサーバおよびアプリケーションには大きな関心をもっています。日本は、すべてでやっていますから、端末もサーバもネットワークも3つとも興味があり、欧州はとくにネットワークに興味があるという状況です。

また、中国は市場が広大ですから、先ほどお話したように、IPR(知的財産権)の問題を絡めて、IPTVによるサービスと同時に、標準におけるIPRをたくさん獲得し、海外のメーカーが中国市場に売るときには、IPTVに関するIPRでもビジネスできるようにしようと、考えているように見えるところがあります。

≪2≫重要となってきたITUの役割

■そうすると、今のそのような国際的な状況の中で、ITUの役割が改めて重要になってきつつあるような感じがします。

井上 ですから、私は、ITUを今日的にどう位置づけるかが、重要になってきていると思っているのです。例えば、現在、ITUがNGNの標準化に取り組んでいますが、昔のように標準化のすべてをITUが担当するという時代は過ぎ、ITUがNGNに関するアーキテクチャーや、要求条件などのフレームワーク(枠組み)を決め、NGNを構成するIMSなどの個々の要素については、例えばTISPANで大枠を決めて、3GPPにもっていって完成させ、ITUが承認するというような仕組みにしてしまったほうがよいのではないかとも思っています。

そのときに、ITUが具体的に貢献したという名前をとりたければ、何かメカニズムを考えればよいのです。私は、それを3GPPでやっているから、そのことによってITUの役割が落ちたなどとまったく思っていないのです。3GPPの検討内容をITUにもっていくことによって、標準化が早くできるわけですからね。むしろITUが、そういうような、いろいろな人や組織に検討してもらう「種」を提供するという意味では非常によいあり方ですし、IPTVもそういう意味ではいろいろな組織に、非常によい検討の場を提供していると思っています。

■ということは、IMSについては3GPPがいいということですね。

井上 IMSの場合はそうですね。それでは、IPTVの場合は、どこがよいかどうかというのはまだわからないのですね。ここは、まだ各組織が取り合いの状況なのです。

■どこがいいと思います?

井上 できれば、日本方式が採用されればありがたいですね、自然な感情としては。

≪3≫NGNリリース2の目玉となるIPTV

■IPTVというのは、NGNリリース2の目玉になるというようなお話がありますね。そこで、少し整理していただきたいのです。NGNリリース1というのは、従来の電話をIP化したという感じだったのですが、NGNリリース2はどのようなイメージになるのでしょうか。

井上 NGNリリース2のイメージを端的にいいますと、NGNというネットワークを、IPTVを実現できる仕掛けに拡張するということです。このため、前回お話したように、日本はIPTVに関する日本方式である「IPSP」を提案するなど、相当力を入れています。ぜひとも日本方式をベースにした標準化を実現したいと思っています。それはIPR(知的財産権)の立場から見ても、他の国の方式をベースにすると、日本のメーカーは特許料を払わなくてはならなくなりますからね。

■なるほど。標準化というのは、国際的にも大きなビジネス・チャンスなのですね。

井上 その通りです。特許料は、テレビ1台1台に入りますし、さらにセット・トップ・ボックス(STB)にも1台1台に入りますから。

■そうすると、他の国は日本方式を標準化にさせたくないと思いますよね。

井上 そう。そこはしのぎ合いになるわけですね。

■家電系でしかも映像系というと日本のお家芸なので、IPTVはぜひ日本方式をベースに標準化して欲しいですね。以前、日本から提案したMPEGが標準化され大成功しましたね。あの時は、そうとう頑張りました。

井上 たしかに、そういう素晴らしい経験をもっています。しかし、先ほどお話した、実際にIPSPに携わっている家電メーカーやサーバ・メーカーの人たちは、ITUの標準化活動にはあんまり精通していないのです。ですから、私どものTTCのようなITU関係の組織にいる専門家がそれをお手伝いしていくことになります。また、もともと端末技術者やサーバ技術者と、ネットワーク技術者は、お互いに畑違いのところがありますので、相互に理解できるような土俵作りも大切なのです。

■標準化の場合、例えば隣の国と相談すると複雑なことになるから、日本だけでやろうというわけなのでしょうか。

井上 そうはいかないでしょう、現実は。例えば、現在、テレビ受像機をつくっているメーカーというのは、世界的にみても、韓国のサムスン、LG電子、それから日本のメーカーが中心です。もちろん将来的には中国もつくるようになるかもしれませんが。そうすると、このIPTV分野は国の利害だけで競争すると、日韓摩擦になりかねません。そんなお隣さん同士の喧嘩をしても仕方ありませんよね。

■それに関して、この前、当編集部も取材させていただきましたが、神戸でCJK会合(中国・日本・韓国による標準機関の会合※1)がありましたね。そのCJK会合のようなところで、緩やかな連合はできないものなのでしょうか。

井上 それが一番いいなと思っていますが、例えば家電メーカー同士は、国際的なビジネスでは競争相手でもありますから、利害関係もかなりからんできますのでむずかしい面があるのは事実です。ですから、例えば私たちのようなTTC(※2)とか、韓国のTTA(※2)のような組織が間に入るとか、あるいは通信事業者のNTTとKT(Korea Telecom)が仲をとりもつとか、そういう形で進めていくことが重要でしょうね。メーカー同士が直接話し合うというのはむずかしいと思います。また、同時に国際的な視野からも協力体制が必要と思います。

※1 用語解説
CJK:China、Japan and Korea、中国・日本・韓国(CJK)の標準化機関によって定期的にCJK会合が開催されている。国際標準化の早期実現を目指すアジア地域における協力体制。

<CJK会合への各国の参加組織>
〔中国〕CCSA:China Communications Standards Association、中国通信標準化協会
〔日本〕TTC:Telecommunication Technology Committee、情報通信技術委員会
ARIB:Association of Radio Industries and Businesses、電波産業会
〔韓国〕TTA:Telecommunication Technology Associations、電気通信技術協会
(参考 CJK会合のURL⇒ http://wbb.forum.impressrd.jp/report/20070719/442

≪4≫NGNリリース2の標準化とそのロードマップ

■ここでまた元に戻りまして、NTTはNGNリリース1をベースのNGNのフィールドトライアルを2007年12月に終了し、2007年度中に商用サービスを開始する予定です。BTは、すでに2006年11月からNGNの商用サービスを始めています。国際的にそういうNGNムードが盛り上がっている中で、NGNリリース2が予定されていると聞きますが、具体的にそのロードマップは決まっているのでしょうか。

井上 これは、具体的には図9のようなロードマップ(NGNのスケジュールの全体像)

になっています。この図9には、ITU-Tで審議しているNGNのロードマップと、ETSIのTISPANのロードマップが示されています。NGNの標準化はTISPANでも行われていますから、NTTもここに参加して議論しています。図9に示すように、TISPANのリリース1は2005年12月に完成に完成しております。TISPANは今、2007年12月の完成を目指してNGNリリース2の標準化進めています。


図9:NGNリリース2の標準化へのロードマップ(クリックで拡大)

■本当に今年(2007年)の12月に完成するのでしょうか。

井上 そのような予定となっています。現実に、TISPANのリリース1のときは、予定通り12月に文章を完成しております。ただし、例外的に一部の文章については、翌年の2月に微修正がかけられておりました。ですから、TISPANリリース2も図9に示した予定の2007年の12月にほぼ完成すると見られています。TISPANのリリース2では、リリース1の拡張として、IPTVも含めて、図10のような内容が審議されています。


図10:TISPANにおけるリリース2の審議内容(クリックで拡大)

一方、ITU-TのNGNリリース1は、図9の上段に示すように概要部が2007年7月完成しましたが、NTTのフィールドトライアルはこのITU-TのNGNリリース1をベースに行われています。ITU-TのNGNリリース2は、図9では2006年10月から標準化を開始し、完成時期は未定となっていますが、2008年の秋ぐらいまでには、主要な機能のアーキテクチャや要求条件を完成バージョンにもっていきたいという見通しのようです。このITU-TのNGNリリース2では、TISPANと同じくIPTVも含めて標準化が進められています。図11に、ITU-TにおけるNGNリリース2の検討項目(サービス)を示します。


図11:ITU-TのNGNリリース2の検討項目(サービス)(クリックで拡大)

■ITU-TとTISPANの両方でIPTVが重視されていることがよく分かりますね。

井上 その通りです。NGNリリース2の追加項目の焦点は、基本的にはIPTVなのです。このIPTVと並んで、韓国が強く主張しているのが、ネットワーク型のRFID、すなわちN-ID(Networked ID)です。NGNリリース1では、電話サービス(IP電話)ができるようになりました。したがって、電話と同じようなサービス、例えばテレビ電話などはリリース1でできるのです。NGNリリース2は、これらに加えてIPTVという、クライアント-サーバ方式の映像配信サービスが追加されるわけです。

■なるほど。IPTVはクライアント-サーバ方式のサービスなのですね。

井上 そうです。IP化されたテレビの番組というのは、世界中のどこに設置されているかはわからないけれども、世界中のどこかにサーバがあり、そこに蓄積されているコンテンツ(番組)を、ユーザーがとりに行くというような形態です。そういうクライアントーサーバ方式のサービスをNGNでどう実現するかというのが課題です。

≪5≫FG IPTVで分類されたIPTVの3つのアーキテクチャ

井上 しかし、IPTVのサービスを提供する側からみると、実は、まだ標準化中であるNGNに限定したサービスだけに頼っていたら、IPTVというサービスはいつまでも普及できず、現実的ではありません。したがって、FG IPTVでは、IPTVのアーキテクチャとして、図12に示すような3つの方式に分類されました。


図12:FG IPTV分類のIPTVアーキテクチャの3方式(クリックで拡大)

■3つの方式について、少し説明していただけますか。

井上 はい。図12に示すように、

(1)1番目は、NGNではなく現状のインターネットでIPTVのサービスを行うという、マイクロソフトなどが行っている非NGN(Non-NGN)方式です。

(2)2番目はNGNを使いますが、IMSは処理が重いのではIMSを使わない方式です。この方式では、NGNがもっているセキュリティ機能のような部分だけ使うという方式で、これはNGN+非IMS(Non-IMS)方式と呼ばれています。

(3)3番目がIMSベースによる、NGN+IMS方式です。

このように、IPTVのサービスは状況に応じて、3つのタイプのIPTVサービスが審議されているのです。ですから、NGNでは、必ずIMSを使ってIPTVサービスを提供するというのは正しくはないのです。

■サービスの形態がいろいろあるということですね。

井上 そうです。IPTVのサービスを提供する側から見たとき、ネットワークは、基本的には図12のように3種類あるわけです。このとき、3種類のネットワークから端末(テレビ受像機)がサービスを受けるときに、それぞれに違うプロトコルを使うのか、あるいは、統一したプロトコルを使うのかが重要になってくるのです。そこで、日本は、前回お話したIPSPという端末とサーバの間のプロトコルを提案し、ネットワークは異なっても、端末側で違いを意識しないで受信できるようにしようとしているわけです。

■それは、1年ぐらいで解決がつく問題なのでしょうか。

井上 今の予定では1年程度でやることを目標にしていますから、実現できるのではないかと思います。また、NGNリリース2の後に、さらに新しいサービスが考えられ、NGNリリース3も予定されています。

≪6≫重要となるTTCのアップストリーム活動

■TTCが現在抱えている課題とCJK(中国・日本・韓国の会合)も含めて、今後どのような取り組みを展開していこうとしているのかということをお話ししてください。

井上 前回も言いましたように、TTCは今年(2007年)の3月まではダウンストリーム機関だったのです。ダウンストリームとは、ITUやIETFなども含めて、いろいろな国際的な標準が決められますが、その標準として決まったものを日本の標準にするという作業のことです。なぜ、日本語化するだけで何の意味があるのかと思われるかもしれませんが、実は国際標準化の中には、必ずその国の事情あるいはその地域の事情を考慮したいくつかのオプション(付随する内容)が記述されているのです。そのオプションを適切に選択しないと、ネットワークは動かないのです。

■具体的には、オプションとはどのようなことですか。

井上 例えば、標準の中に、ある数値(バイト)の使い方が指定されていて、このバイトはナショナル・ユース(その国の事情に合わせて使用すること)ですよ、というような記述が必ずあるのです。例えば、そのバイトは保守運用のために使おうとしたら、保守運用にどう使うのかを決めておく必要があるのです。この1ビットを立てたら、これは伝送路がおかしいことを意味する。あるいは、この1ビットの意味はルータがおかしいことを意味する、というように決めていくのです。それをTTCなどで審議してきちんと決めておかないと、ネットワーク・ベンダや装置メーカーがそれぞれ違った意味に解釈したり定義してしまうと、相互接続ができなくなったりしてしまうのです。

■おっしゃるとおりですね。

井上 そういうことを一つ一つ、コツコツと決めて、日本の中は少なくとも相互接続性がフルに発揮できるように、今まで日本語化してきたのです。その意味では、ダウンストリームの役割は非常に大きかったし、これからもそれは大きいと思っています。

■しかし、今後はTTCにおけるアップストリーム活動も重要になってきますね。

井上 ですから、もともとTTCが生まれた当時に比べて、国際標準を日本語化するという、その母体だったITUそのものが最近様変わりしています。そこで、先ほど申し上げたようにITU自体が変わらなくてはいけないのです。技術そのものの開発や標準化はデファクトであるとか、そういう組織にところに任せたほうが早く、よいものができる可能性が高いのです。

≪7≫日本とって重要となる「CJK会合」(アジア連合)

井上 ITUは、そのようなところで競争するのではなく、参加国である191カ国で新しいサービスが普及できるようにしたり、支援できるようにしていくことが重要なのです。そのために、世界の各地域の要求条件であるとか、求められる標準は何かを、できるだけ早くとらえるようにしていく必要があると思います。そのようなアップストリームの活動をTTCも取り組んでいく必要があると思っています。

このようなことから、今はこの分野のマーケットは、グローバル化していますから、やっぱり日本のメーカーが世界に出ていきやすいように、各国々や各地域のマーケットの要求条件などをもっともっと真剣に考えていくことが大切だと思っています。したがって、今、TTCでは新しい標語として、「国内からアジアへ」という言い方をしているのです。

■それは素敵な標語ですね。

井上 ありがとうございます。国内からアジアへ。アジアへという意味は、アジアを席巻しようという意味じゃなくて、アジアの各国々とスクラム組んで一緒にやろうよということですね。今まで、日本が成功した、あるいは国際競争力が付いてきたというときに、頭の中には自分たちの製品が売れて使われていること、それしかなかったわけです。

このような認識ではなく、アジアの人と一緒になってみんなで作った(標準化した)ものが、みんなに売れて使われる。当然、標準化のためのリスク・シェアも売り上げのプロフィット・シェアもみんなで分かち合いましょう。そのような仕組みにしていかないと、日本はアジアの中で生きていけないと思うわけです。

幸いにして、日本のポジションはまだポテンシャルが非常に高いし、技術力も高いから、この時期にパートナリングをきちんとすれば、アジアの国々は安心して、一緒にやってくれるのではないかと思うのです。アジアには、もう50カ国ぐらいもあります。ですから、いきなり全体的にやるのは難しいところがありますから、まずは数カ国、仲間になってくれるところと一緒に始めるということなのです。

■CJK会合という新しいアジア連合の組織が、さらに発展し、そのような展望を拓いていかれることを期待しています。

井上 NGNのリリース2やIPTVの標準化活動を通して、TTCがそのような「国内からアジアへ」という場を提供できますよう、これからも活動していきたいと思っています。

■長い時間にわたりありがとうございました。

プロフィール

井上 友二(いのうえ ゆうじ)

現職:(社)情報通信技術委員会(TTC)理事長・事務局長

1971年 九州大学工学部電子工学科卒
1973年 九州大学大学院工学研究科修士課程電子工学専攻了
1973年 日本電信電話公社に入社し、横須賀電気通信研究所を最初に通信網構成技術や伝送技術等の研究に従事
1982年~1992年まで CCITT SG18(現ITU-T SG13)における国際標準化作業に参加し貢献。その後、NTTマルチメディアネットワーク研究所長、(株)NTTデータ取締役・技術開発本部本部長、NTT取締役・第三部門長等を歴任
2006年 NTT取締役・CTO
2007年4月よりTTC専務理事・事務局長に就任し、6月より現職

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