[特別レポート]

中国ケータイ最前線(3):中国の携帯電話のビジネス・モデル

2008/02/22
(金)
陶 一智

≪4≫競争が激しい携帯電話の販売店。ユニークなキャンペーンも

ここで、携帯電話の通信事業者系の営業所をいくつか紹介します。

通信事業者系直営店でも、SIMカードやチャージ用のカードだけではなく、端末も販売していることがほとんどです。例えば、店舗の1階にサービスのカウンターがあり、2階は携帯端末売り場になっているような所もあります。

事業者同士や販売店同士の競争が激しいので、各販売店はいろいろなサービスを考えています。例えば、写真2は、中国移動系の営業所ですが、看板の下の垂れ幕には、「通話料50元(750円)をチャージすると、24缶のビールをプレゼント!」という日本ではめったにお目にかかれないキャンペーンが書いてあります。

写真2 中国移動の営業所
写真2 中国移動の営業所:看板の下の垂れ幕は「通話料50元(750円)をチャージすると、24缶のビールをプレゼント!」と書いてある

写真3は営業所の前に置いてある看板で、こちらのほうにも、「通話料50元(750円)チャージすると、24個の缶ビールあるいはコーラをプレゼントする」と書いてあります。また、別のプランの景品でしょうが、下のほうには「200元(3200円)をチャージすると12個の缶ビールあるいはコーラをプレゼント」と書いてあります。

写真3 中国移動の営業所前の看板
写真3 中国移動の営業所前の看板:「通話料50元(750円)チャージすると、24個の缶ビールあるいはコーラをプレゼントする」とある

一方、中国移動のライバルである中国聯通系の営業所の看板を写真4に示します。営業所の数は中国移動よりも少ないようです。携帯電話サービスのシェアでも、中国聯通が3割弱で、中国移動は7割近くのシェアをもっています。

写真4 中国聯通の営業所の看板
写真4 中国聯通の営業所の看板

これまで見てきた店舗は、中国移動と中国聯通2社の携帯電話の販売店ですが、携帯電話以外では、PHSを販売している中国網通の営業所もよく見かけます。写真5は、その例です。中国網通は、固定電話やPHSだけでなく、ブロードバンドのインターネット接続サービスも提供しています。

写真5 中国網通の営業所の看板
写真5 中国網通の営業所の看板

【コラム】

SIMカードとは
SIMカードは、世界で広く普及しているGSM方式の携帯電話において、携帯端末と通信事業者の分離ができるように考えられたもので、第3世代のW-CDMA方式やCDMA2000方式でも、上位互換のUSIM(Universal Subscriber Identity Module)の使用が規格化されました。

なお、日本にはGSM方式のサービスはありません。第3世代のFOMAなどの携帯電話ではUSIM(UIMとも呼ばれる)が使用されます。日本では解約する場合には、SIMカードをキャリアに返却することになっており、プリペイド用のSIMカードも販売されていません。また、携帯端末側では契約したキャリア以外のSIMには入れ替えられないSIMロックがかけられています。

これに対し、中国では、SIMロック・フリーであり、GSM方式であれば、SIMを入れ替えれることで、複数の事業者のサービスを一つの端末で利用することができます。また、端末によっては、1台に複数のSIMカードを入れることができたり、1枚のSIMに複数の携帯番号が登録できるようになっているものもあります。

表2に、SIMカードに関連する用語をまとめておきました。

用語 説明
PIN1 SIMカードを保護するための暗証番号。携帯の電源を入れた時や、SIMカードを入れ替えた時に要求される
PIN2 ユーザ証明書の操作など、特定の機能を保護をするためのもう一つの暗証番号
PUK
(PIN Unlock Key)
PINの入力を3回連続で誤った場合にロックがかかり、PINコードが入力できなくなる。PUKは、これを解除するためのキー。SIMカードと一緒に渡される。さらに、PUKを10回連続で誤るとSIMカードが完全にロックされる。解除するためには、販売店へ持ち込む必要がある

※PIN:Personal Identification Number
表2 SIMに関する用語表

 

プロフィール

陶一智(とう・いちち)

7年前に来日し、2006年に法政大学ビジネススクールにおいてMBA(経営学修士号)を取得。
現在、株式会社TERMONYのインターネットビジネス事業部代表として、女性のためのウィッグ販売サイトhttp://www.igennki.comのオペレーションを行っている。

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