[1]動画と音声の品質が向上
まず、デジタル放送によって「品質」が良くなります。ここで言う品質とは、動画と音声の綺麗さと鮮明さを指しています。
従来のアナログ放送の場合には、テレビ電波の強度によってその品質が左右されています。これを簡単に言うと、テレビ塔(例えば関東では東京タワー)から遠くなればなるほど、テレビの映像と音声を表している信号に雑音が含まれることになり、映りの悪い動画が雑音の混ざった音声とともにテレビに映ることになります。また、テレビ塔の近くであっても、大きなビルなどの影響によって、いわゆるゴーストという現象が生じ、テレビの映像がいくつも重なったように表示され、大変不快な思いをすることもあります。しかし、デジタル放送ではそのようなことは原理的にありません。デジタル放送では、「誤り訂正技術」(第2章参照)などによって、このような雑音による信号の劣化を自動的に補正することができますので、高い品質を保持したまま、非常に遠くまで品質の良い動画像と音声を伝送できます。
図1-1を見てください。これは、アナログ放送とデジタル放送の距離による品質の違いを模式的に表したものです。あくまでもこれは例であって、種々の条件によって細部は異なりますが、大まかな傾向を表しています。
図1-1を見てわかるように、アナログ放送の場合の品質は、距離に応じてなだらかに品質が劣化していきます。これに対してデジタル放送の場合には、前述した誤り訂正符号などの働きにより、ある程度の距離まではまったく品質を劣化させることなく動画像と音声を伝送することができます。しかし、誤り訂正符号でも訂正しきれない誤りが生じるようになると、急激に品質が劣化し、まったく放送を受信できなくなってしまいます。
図1-1の場合、Aの地域に住んでいる人は、アナログよりもはるかに品質の良い放送を受信することができます。これに対してBの地域に住んでいる人は、このままではデジタル放送の恩恵を受けることはできません。しかし、実際にはこのような地域を解消するために、新しいテレビ塔を設けてそちらからの電波を受けたり、さらに誤り訂正符号を強化したりするなどの運用上の工夫によって、良い品質の放送を受けることができるようになります。
※この「Q&Aで学ぶ基礎技術:デジタル放送編」は、著者の承諾を得て、好評発売中の「改訂版 デジタル放送教科書(上)」の第1章から転載したものです。ご了承ください。