このコーナーでは、最新のICT(情報通信技術)のキーワードをQ&A形式でわかりやすく解説していきます。
2003年12月から開始された地上デジタル放送により、BSデジタル放送から、CSデジタル、CS110°デジタル放送、地上デジタル放送に至るまで、さまざまなデジタル放送が利用でき、多彩な放送を受信できるようになりました。ここでは、これらのデジタル放送と、今までのアナログ放送やインターネットとの相違点から、デジタル放送時代の法制度までを解説していきます。
今回は、アナログ放送に対するデジタル放送のメリットについて説明します。


Q3:アナログとデジタルの違いは?
アナログとデジタルの違いはどのようなことでしょうか? また、デジタル化するとどのような利点があるのでしょうか?
≪1≫アナログとデジタルの違い
「アナログ」とは、連続的な値の情報によって情報を表すことであり、テレビの情報を伝送する時には時間的に変化する「波形情報」を用いてこれを表します。これに対して「デジタル」とは、離散的な(連続的でない飛び飛びの)数値情報によって情報を表し、テレビの情報を伝送する時には、この時間的に変化する「数値情報」を用いてこれを表します(図1-4)。
[1]本質的内容は基本的に同一のアナログとデジタル
理工系の大学で情報理論を習った人には自明のことですが、「シャノンの標本化定理」というものがあり、アナログ情報とデジタル情報は完全に可換(交換できること)であるということが証明されています(正確に言うと量子化ノイズというものが存在しますが)。すなわち、アナログとデジタルは単に表現方法の違いであり、表されている本質的な内容は基本的には同一です。それでは、なぜアナログ表現とデジタル表現があるのでしょうか。
[2]デジタル処理する利点
その理由は、デジタルにすることでさまざまな処理を施すことができるためです。次に、いくつかの例を挙げて、その利点を説明します。
例えば、Q.1でも登場した「誤り訂正符号」(『デジタル放送教科書』第2章参照)というものがありますが、これは、信号へノイズが混入することによる誤りを受信側で訂正できるものです。このような機能は、デジタル信号処理に特有のものです。つまり、このような誤り訂正処理は数学の理論を基にして行われており、元情報を数字で表すことのできるデジタルで容易に実現できる技術であり、アナログではなかなか実現することが困難です。
また、デジタルによって表現された情報は、ノイズに強いため、劣化することなく複製を作ることができます。このことにより、情報の保存性と可搬性(持ち運びできること)が増すことになります。つまり、情報の再加工性が良くなり、再処理が可能となりますので、今まで考えられなかったさまざまなマルチメディア処理が可能となってきます。
例えば、映画に用いられる特撮などでは、フィルムを使用したアナログ編集ではノイズが混入してしまうため、複数の映像から1つの映像を作り出す映像の多重撮りの回数には限界がありました。しかし、デジタルの場合にはフィルムを使用しなくても、すべてコンピュータ上でのデータ処理として実現できますから、そのような限界はなく、必要なだけ品質を落とさずに多重撮りすることができます。
このため、コンピュータ・グラフィックスなどで、いろいろな画像を組み合わせて加工することが容易になっていることはご存知のとおりです。
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