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住友商事、米国北東部で東芝製大型蓄電池による電力需給調整事業に参画

2015/04/20
(月)
SmartGridニューズレター編集部

2015年4月20日、住友商事株式会社(以下:住友商事)および米州住友商事会社(米国ニューヨーク州)(両者を総称して以下:住友商事グループ)は、子会社のPerennial Power Holdings(米国ニューヨーク州)を通じ、再生可能エネルギーデベロッパー兼建設業者であるRESグループの米国法人Renewable Energy Systems Americas(以下:RES社、米国コロラド州)よりWilley Battery Utility,LLC(以下:WBU社)の株式を取得したことを発表した。

今後、WBU社にて東芝製蓄電池システム(最大出力6メガワット、容量2メガワットアワー)を保有し、米国最大の独立系統運用機関であるPJM※1が運営する周波数調整市場※2向けに需給調整サービス※3を実施する。

日本製の大型蓄電池を使った海外での事業への参画は、同事業が日本企業初となる。

 蓄電システム(外観・内観)イメージ写真

米国では、風力発電や太陽光発電などの出力変動の大きい再生可能エネルギー比率の増加、あるいは電力の需要予測のズレなどに対応するための調整電力は周波数調整市場を通じて調達されている。

従来、調整電力は火力発電や水力発電などの発電事業者によって供給されてきたが、再生可能エネルギーの一層の普及拡大に伴い、変動に対する反応スピードがより迅速で、細やかな調整が可能な蓄電池などの新技術の導入が米国では積極的に検討されており、今後の市場拡大が見込まれる。

同事業では、東芝が蓄電システムの納入およびメンテナンスを担当し、RES社が変圧器などの補機の供給や据付、稼働時のシステム管理・操作・制御を行う。オハイオ州ハミルトン郡において2015年4月に着工し、2015年12月の運用開始を予定する。

東芝が保有するリチウムイオン電池製造に基づく技術力と、北米で7,700メガワットの再生可能エネルギー関連の開発実績(建設中含む)をもつRES社の開発・設計・建設能力および住友商事グループの再生可能エネルギーを含めた電力事業運営ノウハウを融合させ、今後、PJMを皮切りにテキサス州やカリフォルニア州などの潜在市場への参画も検討していく。

住友商事グループは、再生可能エネルギー普及に伴って電力系統安定化のニーズが高まるなか、蓄電池に着目し、事業会社であるフォーアールエナジーと協力して国内での実証事業を進めてきた。2013年に大阪市夢洲にて、2014年からは鹿児島県薩摩川内市甑島においてEVリユース蓄電池を使った実証事業に取り組んできている。国内外での蓄電池運用を通じ、蓄電池システムの有効性を確認するとともに、発電事業者として米国で運営する既存発電所(風力、太陽光、ガス火力など)と蓄電池ビジネスとの将来的なシナジー創出の可能性も検討していく。

RESグループは、過去32年にわたり世界で陸上・洋上風力、太陽光、蓄電、送電、需要管理等の再生可能エネルギーに関わる事業に取り組んでおり、これまでに約9ギガワットの再生可能エネルギー発電所等を開発・建設するとともに、1ギガワット超の発電所を管理・運営している。日本においても、風力・太陽光をはじめとする各種再生可能エネルギーの開発から発電事業までを行い、今後はさらに蓄電・送電などの開発も予定している。

同事業の内容をまとめた表を下記に示す。

事業の概要

事業内容 PJM周波数調整市場における蓄電池を活用した電力需給調整サービスの提供
事業主体 Willey Battery Utility,LLC(住友商事グループ100%)
所在地 米国オハイオ州
サプライヤー 東芝(最大出力6メガワット/容量2メガワットアワーのコンテナ型蓄電システム)
RES(補機・据付工事)
O&M・入札 RES

 


※1:米国を代表する地域送電機関の一つ。ペンシルバニア州など米国北東部13州を管轄し、域内の総発電容量は約185,600メガワットと、日本の総発電容量約230,000メガワット(原子力発電を除く)に匹敵する。

※2:発電所の運転計画や需要予想のズレ、再生可能エネルギーの出力変動等に起因する数秒から数分程度の需給ミスマッチ調整用の予備力を調達する市場。

※3:PJMから2秒ごとに発信される充放電指令に従い、充放電を行い電力需給を調整する事業。充放電指令に対するパフォーマンス実績に応じてPJMから対価が支払われる仕組み。

■リンク
住友商事

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