住友商事と日本ベネックスは2017年12月4日、電気自動車(EV)と使い古しの車載用リチウムイオン蓄電池を導入し、バーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)構築実証事業「関西VPPプロジェクト」に参加すると発表した。関西VPPプロジェクトは関西電力や富士電機、住友電気工業などが2017年7月14日から取り組んでいるもので、電力系統に点在する蓄電池やEV、エコキュートなどの機器を遠隔制御し、1つの大規模な仮想的発電所(VPP)として機能させることを目標としている。
使い古しの車載用リチウムイオン蓄電池は、物流コンテナに複数詰め込んで、大容量の定置型蓄電池として利用する。住友商事は夢洲(ゆめしま:大阪府大阪市)や上甑島(かみこしきしま:鹿児島県薩摩川内市)で使い古しの車載用リチウムイオン蓄電池を物流コンテナに詰め込んだものを運用している(参考記事)。
今回は日本ベネックスと住友商事が共同で高密度積載技術を駆使して、同じサイズの物流コンテナに2倍(EV24台分)の車載用蓄電池を詰め込んだものを開発する。これを日本ベネックスの本社工場(長崎県諫早市)敷地内に設置し、VPP実証事業に活用するほか、工場の電力需要がピークを迎える時間帯の補助電源として使用する。
今回使用する、コンテナを利用した定置型リチウムイオン蓄電池の定格容量は576kWh(実効容量はおよそ400kWh)。加えて日産自動車の商用EV「e-NV200」10台と、充電スタンド10台を導入した。e-NV200は蓄電容量24kWhのリチウムイオン蓄電池を内蔵している。10台のEVは従業員の通勤などに利用し、駐車場に停車しているときは充電スタンドに接続し、遠隔制御で充電時間帯を制御する。この仕組みで10台のEVを1つの大きな蓄電池として活用する。
図 コンテナを利用した定置型蓄電池(左)と、今回導入したEV「e-NV200」10台(右)
出所 住友商事
コンテナを利用した定置型蓄電池は、2018年1月に設置工事が完了し、稼働を始める予定。そして今回使用するこの蓄電池は、VPP対応の新型蓄電池システムとして富士電機が製品化し、住友商事が産業用システムとして拡販し、大型蓄電池事業に活用する計画だ。また、住友商事は今回のVPP実証事業に参加した成果を検証し、使い古しのEV用リチウムイオン蓄電池を活用した新しい電力事業の可能性を模索する。