2015年8月24日、日本電気株式会社(以下:NEC、東京都港区、執行役員社長:遠藤 信博 )は、東京大学 生産技術研究所 荻本和彦特任教授、東京農工大学 工学研究院 池上貴志准教授と共同で、電力会社やエネルギー管理サービス事業者(アグリゲータ)が発電事業者に適用する、太陽光発電の出力制御技術を開発したことを発表した。
今回開発した技術では、余剰電力の抑制のために、太陽光による発電量を高精度に予測するとともに、予測値のずれ幅を把握することで、各発電事業者に割り当て可能な最小限の抑制量を算出する。同時に、太陽光発電所の設置場所の気候条件と抑制履歴を考慮し、抑制量の公平な割り当てを行う。これらにより複数の発電事業者に抑制量を一斉に配分する制御手法を実現する※1。同技術を電力システムの運用シミュレーションを用いて評価した結果、従来の手法と比べて、発電の抑制量を3分の2に抑えられるという有効性が認められた。同技術の特徴は次の通り。
◆新技術の特徴
- 予測確率を設定できる太陽光発電量の高精度な予測
複雑な気象変化により予想が困難とされる太陽光の発電量を予測し、さらに気象パラメータ(雲の量や気温など)を使った独自の指標で、天気予報のような当たる確率(予測確率)を付与できる「信頼度つき発電量予測」技術を開発した。
同技術では、対象日の発電量の信頼度を予測する際、過去の気象変化の類似性に着目し、数千を超える気象パラメータの組合せを用いて、気象の類似度合いを表現する独自の手法を用いる。これにより発電量の信頼度を高精度に把握できるようになった。例えば、予測確率95%での発電量は、下限X[kW]~上限Y[kW]、といった予測値の上下限幅を把握することが可能である。このように、予測値のずれ幅が算出できることで、電力会社等は、上下限値内の複数のケースに対する制御の仮説が立てられるようになり、より適切な抑制量の設定と配分を実現する。
- 過剰抑制を低減し公平な最適配分・一括制御
「信頼度つき発電量予測技術」で予測した太陽光発電の発電量をもとに、電力会社やアグリゲータが実際の抑制量を決定し、各大規模電力発電事業者※2に対して、抑制量を最適に配分・一括制御する技術を開発した。
最適配分では、先述の発電量予測と、過去の出力抑制の履歴や気候条件に基づき、公平性を考慮しながら過剰抑制を低減する独自のアルゴリズムで、きめ細かく抑制量を決定する。また、この抑制量を制御対象の発電事業者に一斉伝達して制御する。同技術について、NECが、電力システムの運用シミュレーションを行って評価した結果、従来よりも抑制日数は多くなるものの、発電抑制量そのものは低減できるという有効性を検証した。
※1 地域の電力供給量が電力需要量を上回ることが想定される場合に、電力会社は、太陽光発電や風力発電の発電設備の出力を制御可能。管轄する電力会社や、電力系統への接続申込の時期によって抑制ルールが異なり、年間30日を上限とした日単位の出力制御(無補償)、360時間を上限とした時間単位の出力制御(無補償)、無制限・無補償での出力制御、などがある。
※2 出力500kW以上の太陽光発電事業者。停電等を回避するために必要な場合、現時点でも、累積30日まで無補償での発電抑制が適用できる。
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