国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2016年11月22日、ポルトガルの国立エネルギー地質研究所と共同で、自動デマンドレスポンスの実証事業を開始すると発表した。風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用率が高いポルトガルで、再生可能エネルギーによる電力が余った場合も想定したデマンドレスポンス機能の実証を目指す。
ポルトガルは再生可能エネルギーの導入に積極的な国で、全供給電力のうち、再生可能エネルギによるものが48%を占めるほどだ。風力発電に限っても22%となる。2016年5月には、連続107時間にわたって、国内すべての電力を再生可能エネルギーで賄ったという記録を残している。
しかし、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーには気候、時間帯などの要素によって発電量が変動し、安定しないという欠点がある。一般的には、必要以上に発電しているときに、その電力を蓄電池に充電しておいて、電力供給が途切れたときに蓄電池から電力を供給するという方法を利用する場合が多い。
今回の実証事業では、必要以上に発電した電力を蓄電池に充電するのではなく、その電力で蓄冷システムを稼働させて、冷気を作り貯めておく。デマンドレスポンス発動によって電力供給が止まったときは、貯めておいた冷気を供給して冷房とすることで、需給を安定させる。
図 今回の実証事業の全体像
出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
実証事業の期間は2019年12月まで。事業では、リスボン市庁舎など複数の施設に蓄冷システムを備えたビル用マルチエアコンを設置する。エアコンの設置はダイキン工業がポルトガル電力公社、Efacec社、everis Portugalと共同で担当する。このエアコンは電力供給量に応じて消費電力量の上限値を自動的に制御するデマンドレスポンス機能を持たせたもの。このエアコンを、前日の天候や日々のエアコン使用状況などから電力需要の推移を予測し、消費量を自動で制御するコンピュータシステムと連携させる。また、現実に近い環境で実証するために現地の電力小売事業社やVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)事業者の協力を得る。
NEDOはこの事業の検証結果を見て、ポルトガルに限らずヨーロッパ全域で自動デマンドレスポンス機能を利用した、電力需要調整の事業の可能性を評価するとしている。