国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とダイキン工業は2018年6月28日、ポルトガルのリスボン市で空調機器の自動制御によるデマンドレスポンスに向けたシステムを完成させ、2018年7月から実証を開始すると発表した。再生可能エネルギーによる電力利用率を高めることを目指す。実証システムはリスボン市庁舎など市内4カ所の施設に設置した。電力の需給状況に応じて空調機器が消費電力量の上限を自動で制御することで、デマンドレスポンスを試みる。
図 NEDOとダイキン工業がリスボン市内に構築したデマンドレスポンス実証用システムの構成
出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
今回の実証では、現地の電力小売事業者や、VPP(Virtual Power Plant)事業者と協力する。このVPP事業者は国内に設置した複数の再生可能エネルギー発電設備をまとめて、VPPを運営している。また、自動でデマンドレスポンス指令を発するADR(Automated Demand Response)業者とも協力する。
業務用ビルでは、電力消費のおよそ4割をエアコンが占めるという。そこで今回の実証では、蓄冷機能付きビル用マルチエアコンにデマンドレスポンス対応機能を持たせたものを実証用設備として設置した。電力の需給状況に応じてこの設備の消費電力量上限を自動的に制御し、再生可能エネルギーによる電力の利用量最大化を狙う。エアコンは、ビルの室内環境を損なわない範囲で制御する。その際には、前日の天候やエアコン使用状況の推移などのデータを分析して当日の電力需要を予測してエアコンを自動的に制御する。
ポルトガルでは、水力、風力、太陽光など再生可能エネルギー発電設備の導入がかなり進んでおり、その規模はヨーロッパでも有数のものになっている。その結果、2016年4月には、再生可能エネルギーによる電力が4日間にわたって国内の全電力需要を満たしている。さらに、2018年3月には、ポルトガルの1カ月分の電力需要を上回る量を再生可能エネルギーで発電している。とはいえ、再生可能エネルギーによる発電量は天候、自然環境によって大きく変動するため、安定供給が課題となっている。