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工場作業者の脈拍の変化などを検知して健康状態を把握、JX金属グループが富士通と共同で実証実験

2016/12/20
(火)
SmartGridニューズレター編集部

富士通は、工場での作業に従事する人の健康状態をセンサーで検知したデータから把握するシステムを構築し、実証実験を実施したと発表した。

富士通は2016年12月19日、工場での作業に従事する人の健康状態をセンサーで検知したデータから把握するシステムを構築し、実証実験を2016年9月に実施したと発表した。実験の場となったのはJX金属プレシジョンテクノロジーの館林工場。同社はJX金属グループに所属する企業で、めっき加工とプレス加工を手掛けている。館林工場はめっき加工を担当している。

めっき加工の作業現場はかなり蒸し暑くなるので、館林工場では作業員の安全確保を改善の大テーマとして掲げていた。特に、1人で作業している作業員が不調に陥ると、周囲に誰もいないので異変に気づいてもらえず、容態が悪化してしまう可能性がある。

実験では、作業員に脈拍や温湿度を計測できる「バイタルセンシングバンド」と、位置情報の検知に利用する「ロケーションバッジ」を装着した。ロケーションバッジには装着している人が転倒したことを検知する機能も持つ。さらに、工場の各所に位置情報把握のためのビーコンを設置した。

バイタルセンシングバンドが検知する脈拍の変化や温湿度からは、主に作業員の「熱ストレス」のレベルを検知した。熱ストレスレベルが上がりすぎると、熱中症に陥って作業不能となる。今回の実験では、作業員一人ひとりの熱ストレスレベルを管理室で把握できるようにした。熱ストレスがある程度まで上がったら、バイタルセンシングバンドが備えるバイブレーターを作動させることで、作業者自身に状態の変化を気づかせる仕組みも取り入れた。また、熱中症に限らず脈拍の急な変動を検知したら、健康状態に異常が発生したと判断し、管理室にメールやアラームで通知した。

図 今回の実証実験で構築したシステムの略式図

図 今回の実証実験で構築したシステムの略式図

出所 富士通

さらに、ロケーションバッジの機能を利用して、健康状態に変化が現れた作業員の位置を管理室に知らせる仕組みも作った。ロケーションバッジが備える装着者の転倒を検知する機能も利用した。作業員が転倒したら、その位置を管理室から把握可能にする機能を加えた。

センサーが検知したデータは工場内に設置したゲートウェイ、あるいは作業員が携帯しているスマートフォンを経由して富士通が運営しているクラウドに送信した。富士通はクラウド上にセンサーデータを独自のアルゴリズムで分析するアプリケーションと、管理室の端末の画面に作業員の状態を表示するアプリケーションを構築した。

富士通によると、今回の実験では不調に陥った作業員や、転倒した作業員を正確に検知し、管理室で確認できることを確認したという。JX金属とJX金属プレシジョンテクノロジーは今後、JXホールディングスに所属する企業の生産拠点に、このシステムを広げていく方針だ。


■リンク
富士通

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