西松建設とスカイディスクは2017年2月15日、1月に実施したIoT向け通信技術「LoRaWAN」の通信試験の結果を公開した(関連記事)。高層ビルなど、無線通信の障害となる建物が林立する都心でも、1km以上離れた場所との通信が可能という結果が出た。
試験の場となったのは港区虎ノ門にある西松建設所有のビル。試験にはスカイディスクが開発した「IoTスターターキット(LoRa model)」を利用した。センサー機器と屋外用ゲートウェイ、屋内用ゲートウェイに加えて、クラウドで動作するデータ分析アプリケーションなどをセットにしたものだ。
図 試験に使用した機器
出所 スカイディスク
試験では、ビルの屋上と屋内にゲートウェイを設置し、電波を受信する機器を持った担当者がビルから離れて、事前に決めたルートを歩きながら、電波がどこまで到達するかを確かめるという形で進めた。
図 検証に使用した2つのルート
出所 スカイディスク
検証に使用したルートは2つ。ビルから北に向かい、丸の内を経由して浜離宮庭園方面からビルに戻る「ルートA」と、ビルから南に向かい、東京タワーと六本木ヒルズを経由して六本木通りをたどってビルに戻る「ルートB」だ。LoRaWANは屋外の通信なら最長でおよそ2kmの距離で通信できるが、どちらのルートも一時的にビルから2kmの範囲から外れる設定になっている。
屋上に設置した屋外用ゲートウェイを使用した場合、ルートAでは最長で2.09km離れたところまで電波が届いた。ルートBでもこの距離はほとんど変わらず、最長で1.94km離れた場所で電波を確認できたとしている。
屋内に設置したゲートウェイを使うと、電波が届く距離は短くなる。ルートAでは、最長で1.39km離れたところで、ルートBでは最長で1.19km離れた場所で電波が到達することを確認した。
スカイディスクは今回の結果を、「屋内、屋外ともに距離が離れても電波は安定している」と評価し、無線LANやBluetoothよりもはるかに長い距離での無線通信が実現できるとしている。この結果を受けて、橋梁やトンネルなど老朽化が進んでいる建築物への応用を進めるとしている。