国土交通省は2017年3月15日、小型船舶を利用した燃料電池船の実船試験を21日から開始すると発表した。2016年度から陸上の施設で基礎実験を続けていたが、次の段階に進んだことになる。
現在、国土交通省は2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目処に、燃料電池船お実用化を目指した環境整備に取り組んでいる。その一環として、2016年度から燃料電池船の安全ガイドラインの策定を始めている。ガイドラインの策定は3年計画となっており、今回開始する実船試験は、ガイドラインを実験データで裏打ちし、合理的なものにすることを目的としている。
実船試験は、国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所の海上技術安全研究所が請け負って、主体となって実施する。実験に使う船は全長16.5mの小型船「神峰」。国土交通省による社会実験「離島の交通支援のためのシームレス小型船システムの開発」のために海上技術安全研究所が開発したものだ。この実験では、船内で発電した電力で、電気自動車に充電するなどの実験を実施している。船体は繊維強化プラスチック製で、最大で11.5ノットの速さで航行する。
この船に出力5kWの固体高分子形燃料電池と、蓄電容量が60kWhのリチウムイオン蓄電池を搭載して試験に挑む。燃料電池はヤンマー製で、リチウムイオン蓄電池は渦潮電機製だ。すでに日本小型船舶検査機構の船舶検査を通過している。
図 試験に使う「神峰」
出所 国土交通省
試験海域は広島県尾道市因島周辺。試験では、燃料電池船の安全に関わる課題を見付け出し、整理する。海水による塩害の影響や、船の揺れや衝撃が燃料電池などの機器に与える影響などについて調べる。実船試験は2018年度も引き続き実施し、安全性の確認を目指すとしている。実践の成果を得たら、2018年度中に燃料電池船の安全ガイドラインを策定する。国土交通省はこれで燃料電池船運用に向けた安全面での環境が整うとしている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、民間業者が燃料電池船を運航することを想定している。
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国土交通省