Audiは2017年8月23日、自動車のルーフ(屋根)に高性能な太陽電池を搭載する目的で、アメリカAlta Devices社と提携すると発表した。Alta Devices社は中国Hanergy社の子会社で、カリフォルニア州サニーヴェールに本社を置いている。ヒ化ガリウム(GaAs:ガリウムヒ素)を原料とした薄膜太陽電池の開発販売を手がけている。
図 Alta Devices社の薄膜太陽電池
出所 Audi
GaAsを原料とした薄膜太陽電池は、薄いため比較的自由に曲げることができ、一般的なシリコン結晶太陽電池よりも変換効率が高いという特徴がある。一方で、原料であるGaAsが高価であるという短所もある。また、毒性が強いヒ素(As)を含有しているため、日本ではほとんど流通していない。
Alta Devices社はすでに自動車向け太陽電池を製品化しており、その変換効率は28.8%~31.6%にもなるという。トヨタ自動車は2月15日に発売した新型「プリウスPHV」のオプションとしてルーフに搭載する太陽光発電モジュールを用意したが、このモジュールはパナソニックのHITモジュールを採用している。HITはシリコン結晶太陽光電池の中では最高レベルの変換効率を誇るが、その値は20%ほど(参考記事)。Alta Devices社の薄膜太陽電池は、さらに高い変換効率を発揮する。
AudiはAlta Devices社の太陽電池をルーフに搭載した試作車両を2017年中に完成させるとしている。変換効率は25%程度になる見込みだ。電池はAlta Devices社が本社で生産する。当初は、太陽電池が発電した電力を車載エアコンや、シートヒーターの電源として利用するとしている。これで電気自動車(EV)の蓄電池に充電した電力を節約でき、走行距離を伸ばすことができると見込んでいる。
そして、将来は太陽電池が発電した電力をEVの蓄電池に充電することを予定している。Audiは、いずれは同社が販売する車両すべてのルーフに太陽電池が載ることになると期待している。