パナソニックは2017年4月6日、工業炉の排気熱エネルギーを高い効率で再利用するシステムを開発したと発表した。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けて開発していたもので、すでに500時間以上の連続運転の実績があり、排気熱エネルギーの回収効率は75%に達するという。
工場などにおける加熱処理に必要な熱エネルギーは、工業で使用するエネルギーの大半を占め、NEDOとパナソニックはこの点にこそ省エネルギーの対策が必要としている。そして、工業炉が排出して捨ててしまう熱のうち70%を200℃未満の排気が占めているという。
パナソニックはNEDOの助成を受けて、捨てるしかなかった排気熱エネルギーを電気などに変換せずに、熱のまま再利用するシステムを開発した。さらにこのシステムに、電界を利用して排気が含んでいる溶媒など不要な微粒子を取り除く機能を加えた。
図 パナソニックが開発した熱エネルギー回収システムの模式図
出所 パナソニック
このシステムを実証する試作機を作成し、量産現場のリフロー炉に取り付けて500時間以上の連続運転を試行してみた。リフロー炉とは、電子基板上にはんだペーストを印刷してから電子部品を載せたものに熱を加える炉。リフロー炉による熱ではんだペーストが溶け、電子部品と基盤を接続できる。
図 量産現場のリフロー炉に熱エネルギー回収システムの試作機を取り付けたところ
出所 パナソニック
連続運転で性能を評価したところ、排気熱エネルギーの回収効率は75%、微粒子の集塵率は91%と高い値を記録した。パナソニックとNEDOはこれで、このシステムの性能、耐久性、安全性を実証できたとしている。導入効果を試算した結果、このシステムのための投資の回収にかかる年数は2〜3年、高い効率で集塵するため、清掃などの炉のメンテナンス時間は1/3に減らせたという。メンテナンス時間が短くなった分、リフロー炉の稼働効率が高まり、その効果で投資回収年数が短くなっているという面もあるという。
NEDOは今後、引き続きこの研究を推進し、未利用熱の有効活用を実現する技術の提供を目指すとしている。そしてパナソニックは、今回開発したリフロー炉向け排気熱回収システムを、2017年度中に社内の製造現場で実用化することを目指す。その後、早期にこのシステムを外販するという目標も示している。さらに今回開発した技術を基に、より排気熱が大きい工程に向けたシステムの開発に取り組むとしている。