業界で統一された算定ルール確立を目指す
経済産業省では2023年度に実施する「GX注1促進に向けたカーボンフットプリントの製品別算定ルール策定支援事業」注2への参加団体を、2023年5月から募集していたが、その決定発表が8月7日にあった。決定されたのは文具、製紙、オフィス家具、電気・情報・通信の4団体。
同省では2050年カーボンニュートラルの実現には、サプライチェーン(部品供給網)全体でのCO2排出量の削減が必要であるとの観点から、カーボンフットプリント(以下、CFP)策定に注力している(図1)。業界ごとに統一されたCFPによって、グリーン製品の公平な比較・検討・導入が容易となる。これにより2050年カーボンニュートラル実現を進めると同時に、日本の経済成長につなげていく。
図1 牛乳を例としたCFP(カーボンフットプリント)定義例
GHG:Green House Gas、温室効果ガス
出所:経済産業省、2023年3月31日、「カーボンフットプリント レポート」
ソフトウェアCFPは、まずCO2排出量の算定基準設定から
今回決定された団体で、特に注目すべきは、ハードウェア上で動作するソフトウェア分野のCFPだ。例えばデータセンターなどにおけるハードウェア分野では、すでに省エネや温室効果ガス削減に関する取り組みが進められているが、現状ではソフトウェアに関しては、動作させた時のCO2排出量の算定基準すらない。CFP策定にあたっては、そうした初歩的な基準作成から始める必要がある。さらに、ソフトウェアの開発段階からのCO2排出量算定や、複数のソフトウェアを連携させた場合のCO2排出量算定はさらに複雑となる。
海外では「Green Software Foundation」が設立
IT業界が全世界で消費する電力の割合は、2015年で10%程度であったが、2030年には20%を超えるという予測注3がある。IT業界のカーボンニュートラルの取り組みは、ITシステムを導入する企業の脱炭素化にも直結する。すでに2021年5月には、米マイクロソフト社などによって、Green Software Foundation(GSF、Linux Foundationの配下の団体)が設立され、ソフトウェアに関するCO2排出量削減のための開発標準化などが進められている。
今回のカーボンフットプリント策定事業に参加したNTTデータグループ注4も、GSFにいち早く参加している。今後、ソフトウェア業界においても、カーボンニュートラルへの取り組みが加速すると思われる。
注1:GX:Green Transformation、グリーントランスフォーメーション。温室効果ガスを発生させる化石燃料から太陽光発電、風力発電などのクリーンエネルギー中心へと転換する取り組み。
注2:https://www.bcg.com/ja-jp/press/7august2023-cfp-product-specific-calculation-rule-support
注3:How to stop data centres from gobbling up the world's electricity(Nature)より
注4:今回のCFP策定事業の参加企業は次の9社。日本電信電話株式会社、株式会社NTTデータグループ、NTTアドバンステクノロジ株式会社、NTTテクノクロス株式会社、NTTコムウェア株式会社、株式会社クニエ、株式会社日立製作所、日本電気株式会社、富士通株式会社。
参考サイト
「カーボンフットプリント レポート」
経済産業省(2023年3月31日)
『国内初、ソフトウェア分野における脱炭素化に向けたCO2排出量算定ルールの策定へ ~「経済産業省 令和5年度 GX 促進に向けたカーボンフットプリントの製品別算定ルール策定支援事業」への参画~』
日本電信電話株式会社ニュースリリース(2023年8月10日)