トヨタ自動車の北米法人であるToyota Motor North America社は2017年4月19日(現地時間)、カリフォリニア州のロサンゼルス港にトヨタ自動車が開発した燃料電池トラックを投入し、今夏から実証実験「Project Portal」を実施すると発表した。燃料電池技術を搭載した大型トラックが、重い荷物による負荷に耐えられるか、重い荷物を載せた状態での長時間走行など、大きな負荷に耐えられるかといった点を検証する。
図 実験に使用する燃料電池トラック
出所 トヨタ自動車
実験に使用する車両は、燃料電池車「MIRAI」の燃料電池セルを2つと、蓄電容量12kWhの蓄電池を搭載したもので、およそ500kWの出力と、約1800Nmのトルクを発揮する。貨物を積載して、車両総重量をおよそ36トンにしても走行できる。水素を満充填した状態での走行距離はだいたい320km。車体は日本のトラックと比べてもかなり大きい。
港湾で実証実験をする理由としては、カリフォルニア州が進めている港湾における環境対策挙げられる。カリフォルニア州は2006年に「港湾大気浄化行動計画(Ports Clean Air Action Plan)」を策定し、ロングビーチ港やロサンゼルス港で大気汚染物質削減に取り組んできた。活動の効果で大気汚染物質は減ったが、今でも問題となっているのが、大量の排ガスを吐き出しながら港湾に乗り付ける物流用の大型トラックだ。
ロサンゼルス港の港湾開発担当の港湾局副局長であるTony Gioiello氏は、「ロサンゼルス港では、関係者とともに大気汚染物質を削減する活動に取り組んできた。今回Toyota Motor North America社が導入する燃料電池トラックは、『港湾大気浄化行動計画』で定めた長期的目標の達成に向けた解決策となるだろう」と語っている。
さらに、他社がこの動きに追随することを期待する声もある。カリフォルニア州大気資源局のMary D. Nichols局長は「トヨタは将来に向けて一歩踏み出した。今回のロサンゼルス港での実証実験をきっかけに、他社が後を追って同様の活動に取り組むことを期待したい」と語った。さらに同氏は、カリフォルニア州大気資源局が、よりクリーンで燃費に優れた大型トラックの普及を促す規制とインセンティブの実施を検討していることを明かし、「今回の実証実験の進捗に注目したい」とコメントを残した。
トヨタ自動車は現在、オランダRoyal Dutch Shell社と共同で、カリフォルニア州内に水素ステーション設置を進める活動を進めている(関連記事)。今後も燃料電池技術の応用可能性を追求し、さらなる技術開発と、さまざまな種類の車両への燃料電池技術の応用を進めていくとしている。